第116話

アルはジュリアに頼まれ本を読んでいた。

フランとアンジェラはその間、旧交を深めるようにお茶を飲みつつ話に華を咲かせていた。

それなりに時間が経った頃、使用人が訪ねてくる。

「お食事の準備ができました」

「わかったわ。行きましょうか」

アンジェラの号令で4人で移動する。

食堂ではロータスが先に席に着いて待っていた。

「お待たせしてしまいましたか?」

「いや。2人の相手をしてくれていたのだろう?」

「本当は顔合わせするだけの予定だったんだけどね」

「アルは優しくしてくれたよ?」

どうやらジュリアにずいぶんと懐かれてしまったようだ。

気に入られた理由はクッキーか読み聞かせかはわからないが嫌われるよりはいいだろう。

「それでは食事をはじめよう」

アルはマナーに気を付けつつ料理に手をつける。

昔は気を張りっぱなしだったが最近では料理を楽しむ余裕がある。

どの料理も手の込んだ逸品でありウィンブルの繁栄を示す物だった。

「楽しんでもらえたかな?」

食事の終わりにロータスが聞いてくる。

「はい。このような宴を設けていただきありがとうございます」

「これもアルフレッド殿のおかげだ」

「といいますと?」

「アヴェント商会は我が国の御用商人だ。色々仕入れてくれてな」

今回の料理では珍しい調味料や香辛料も使われていた。

それらを入手してきたのはアヴェント商会なのだろう。

「お力になれているなら喜ばしいことです」

「今後も力を貸してやってほしい」

「我々もアヴェント商会には助けられていますから」

交易がうまくいっているのはアヴェント商会の信頼があってこそだ。

それを考えれば持ちつ持たれつの関係だ。

「前はサーキス王国の船に頼んでいたのだがな・・・。入ってくる品は少なく料金も倍以上だった・・・」

「内陸国ですからね・・・」

「商隊を組んで陸路で運ばせてもいるが、いくつも国を跨ぐことでどうしても割高になる」

国によっては交通税を求めてきたりするし、陸では運べる量も限られる。

そして荷物を山賊や盗賊から守るために多くの人員を雇う必要もある。

そうなれば食費や宿泊料なども馬鹿にならない。

現在も陸路での商いは続けているそうだがそれは保険のようなものらしい。

国の舵取りとしてそれは納得のいくものだった。

アル達としては安定して供給したいところではあるが海の上では何が起こるかわからない。

海賊や正規軍から襲われる可能性は低いだろう。

だが、嵐など人間の力ではどうにもならない存在もあるのだ。

リスクを分散させておくのは大事なことだった。

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