第118話

アルとフランはウィンブルに1週間ほど滞在していた。

その間、ジュリアに頼まれ文字を教えたり街を探索したりと充実した日々を送らせてもらった。

アンジェラ曰く、以前は勉強はつまらないと駄々をこねていたそうだがアルから貰った本をよほど読みたかったのかジュリアは真剣に文字を習っていた。

帰る際、ジュリアはアルと放れたくないと泣いて頼んできたがいつまでもウィンブルに滞在しているわけにはいかない。

アルが「また会いましょう」と言うとなんとか泣き止んでくれた。

「ふふ。アル。ずいぶんと懐かれましたね」

「そうですね・・・。ここまで懐かれるとは思っていませんでした」

「さて、十分休ませてもらいましたし帰ったらお仕事ですね」

「そうですね。義父様がいるとはいえ任せっきりというわけにはいかないでしょう」

アルもフランも王族としてそれぞれ仕事を抱えている身だ。

戻ったらお互いにまた忙しくなることだろう。



道中、問題が起きることもなく2人は無事、ヒンメルン王国に戻ってきた。

「おかえり」

「ただいま戻りました」

「お父様とお母様もお変わりなくお過ごしのようで安心しました」

「まずはしっかり休んでくれ」

「はい」

アルとフランはそのまま自室に戻って英気を養うことにした。

のんびりとした時間を過ごし、翌日アルは仕事のために城を発った。

目指すのは港街であるスーウェンである。

予定では追加の船の補充が1つ。

もう1つは交易の為だ。

アルが不在のため、交易が行えていなかったのである。

スーウェンに到着するとアルはまず船の補充を行う。

そして、交易品を満載した船に乗り込むとそのままスーウェンの港町を出向した。

「アルフレッド様。ありがとうございます」

お礼を言ってくるのはアヴェント商会のジェフリーだ。

彼もウィンブル王国から戻ってきたばかりのはずだがそれでも疲れを見せずにそう言ってくる。

「いえ。余裕を持って起きたいですから」

交易を今すぐしなくても商品にはまだ余裕がある。

だが、切羽詰まって取引をするよりも余裕を持っていた方が精神衛生的に考えて好ましい。

焦ればそれだけ相手に足元を見られたりミスをするものだ。



サンソンの港街には特に問題なく到着することができた。

が、何やら街が騒がしい。

「様子がおかしいですね。少々調べてきます」

ジェフリーはそう言うと護衛を引き連れてサンソンに上陸した。

何事もなければいいのだが・・・。

その願いは叶わなかったようだ。

ジェフリーとジュエリー商会のマンハッタンが大急ぎで戻ってきたのだった。

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