第119話
「アルフレッド様。ようこそおいでくださいました」
「マルハッタンさん。街の様子がおかしいですが何かあったんですか?」
「それが、妙な薬が流行ってまして・・・」
「妙な薬?」
「最初は気分を高揚させるだけなんです。ですが、使い続けると幻覚や幻聴が聞こえるようになり、薬の効果が切れると薬を求めずにはいられないようです」
「なるほど・・・。麻薬のようなものですか・・・」
「アルフレッド様はご存じなのですか?」
「知識としては知っています。放っておけば大変なことになるでしょう」
「具体的には・・・?」
「使い続ければ脳を破壊され廃人になるでしょう」
「なんと・・・。それほど危険な物だったとは・・・」
「この地を統治してるのはサーキス王国でしたね?」
「そうです。ですが、サーキス王国は暴れた薬使用者を拘束するだけで何も対処してくれないのです」
「危険性を知らないのか。それとも薬を流しているのがサーキス王国なのか・・・」
「薬を流しているのがサーキス王国?その根拠は・・・?」
「麻薬には依存性があります。最初は少額で売り、止められなくなったところで価格を吊り上げる。そうすれば莫大な利益があげられるでしょう」
「確かに薬を買うために借金をしている者も大勢おります」
「サーキス王国は莫大な借金がありますからね。手っ取り早く回収しようと思えば違法な手段をとってもおかしくありません。薬が原因なら薬の蔓延を阻止しようともっと動きがあってもいいはずです」
「なるほど。一理ありますな」
「ですが、我々だけでこれを止めるのはかなり難しいでしょう」
サーキス王国は敗戦の影響で常駐させている人員が減っているとはいえそれでもこの地を統治するのにかなりの人員を置いている。
こちらは船に乗っている人員だけなのだ。
海戦なら負けなくても陸に上がれば人数差でどうにもならない。
「そこについては私にお任せください」
「と、言うと?」
「我々はこの地で長らく商売してきた商人です。他の商会にも声をかければかなりの人数が集まるはずです」
「よろしいのですか?」
人数を集めれば反乱を疑われる可能性もある。
「この地を守る為です。多少のリスクは織り込み済みです」
「ならば、我々もできる限り力になりましょう」
植民地を支配するサーキス王国の軍隊にとってアルの率いるマルコシアス王国の艦隊は無視できないはずだ。
こちらは自由に攻める場所を決められるがあちらは防衛の為に戦力を分散させる必要がある。
地球でも大国であるはずの清がイギリスに勝てなかったのだから勝機はあるはずだ。
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