第120話

マルコシアス王国艦隊はアルの指示でアンソンに寄港する船の臨検を行っていた。

サーキス王国の艦隊もそれを黙ってみていたわけではない。

再三にわたり今すぐ臨検をやめるように通告してきているがアルはそれを突っぱねた。

というのも、臨検した船から薬物であろう粉が見つかっていたからだ。

見つかった粉については全て焼却処分している。

陸ではジュエリー商会のマンハッタンを中心に売人の拘束が進んでいた。

問題となったのは使用者達だ。

対応としては薬との関係を絶たせることが重要だ。

一定期間、世間と隔離させるしかない。

だが、薬の使用者は想像以上に多く隔離する場所が不足している。

それだけでなく世話をする人員も足りていない。

「とにかく出来ることをするしかないですね」

「そうですな。まったく何を考えているのか・・・」

マンハッタンもそうだが協力してくれている他の商人にも疲労の色が見える。

「皆さん。しっかり休んでくださいね」

「休んでいる場合では・・・」

「いえ。皆さんが倒れればそれこそ大変です」

できる限りの支援をするつもりではいるがそれでもメインで動いているのはマンハッタン達なのだ。

長年の信頼もあるのだろう。

住民達もマンハッタン達に協力的なのだ。

アル達が中心で動いていてはこうはいかなかっただろう。

少しずつではあるが薬物がどれぐらい広がっているのかがわかってきた。

植民地であるこの地域はもちろんのこと周辺国にも広がっているようだ。

各国も対応しているが状況はよろしくない。

このままではもっと深刻な事態になる可能性がある。

「皆さんには一度、ヒンメルン王国に戻ってもらいます」

「アルフレッド様は?」

「僕はこの地に留まります。マルコシアス王国の王族として出来ることがあるはずです」

実際アルが現地に残ることでサーキス王国の常駐軍は手出しができないでいるのだ。

「危険すぎませんか?」

「危険はもちろんあるでしょう」

「だったら・・・」

「これでも僕は腕に覚えがありますからね」

船員達は何かいいたそうだったがアルの覚悟が固いと知ると「できる限り早く戻ってきます」と言い残して出港していった。

供給源を止める必要があるのだ。

恐らく作られているのはサーキス王国の本土かその近辺。

根本から解決しようと思ったらジェイクに動いてもらうしかない。

こちらはこちらで出来ることをしよう。

まずはマンハッタン達と共に今後の方針を話し合う必要があるだろう。

アルの考えが正しければ一波乱起きる。

だが、強行する価値はあるはずだ。

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