第48話

昼食の後もアルとフランは街を探索していた。

そこに護衛をゾロゾロと引き連れた馬車が通りかかる。

馬車の取り付けられた紋章を見てフランが嫌そうな顔をする。

早く通りすぎてほしいそう思っているようだ。

だが、馬車は目の前で停止した。

中からでっぷりと太った男が降りてくる。

「おぉ。こんなところで会えるとは。天の導きですな」

「ウェスカー様。ご無沙汰しております。本日はどういったご用向きで?」

「将来の妻の顔を見に来るのに理由など必要あるまい?」

「フランソワ様。こちらの方は・・・?」

「ご紹介します。こちらの方はサーキス王国のウェスカー・ド・サーキス殿下です」

「なんだ。この子供は・・・?私とフランの会瀬に水を差すとは」

「ウェスカー様。こちらの方は我が国の客人です。無礼は許しませんよ?」

フランはきりっとした顔でそう宣言する。

「私よりそちらの餓鬼を選ぶだと?私を怒らせるとどうなるかわかっているのか?」

「脅しのつもりですか?礼儀の知らぬ方とお付き合いするつもりはありません」

呼ばれてもいないし事前の連絡もなしにやってきて自分の都合だけを押し付ける。

それはマナーの悪い行為であると同時に非常識な行動だった。

「小僧。名を名乗れ」

「申し遅れました。アルフレッド・ド・マルコシアスと申します」

「マルコシアス・・・。マルコシアス・・・。どこかで聞いた名だな」

そこでお付きと思われる老紳士がウェスカーに耳打ちする。

「そうか。お前が父上が言っていた田舎者か」

「確かに我が国は貴国からしたら遠方にある国です。ですが、無礼ではありませんか?」

アルとしてもここは引くわけにはいかない。

王族として権威を守るために馬鹿にされたままでは面子が保てないのだ。

「我が国が本気を出せばお前達のちっぽけな国なんていつでも滅ぼせるのだぞ」

どうやらウェスカーは本気でそう思っているようだ。

「ウェスカー殿は御存知ないようですね。我が国の艦隊に貴国の艦隊が敗れたことを」

「そんなわけあるはずがない。我が国の艦隊は世界一なのだぞ?馬鹿にするのも大概にしろ」

「貴方にとってはそれが真実なのでしょうね」

「生意気な餓鬼め。貴様のような餓鬼には躾が必要だ」

そう言ってウェスカーは片手の手袋を脱ぎ投げつけてくる。

その速度は非常に遅く避けようと思えば避けられたが何を言われるかわからないためあえて受け止めた。

「アルフレッド様・・・」

フランがアルを心配するような顔をしていた。

アルはフランを安心させるように微笑みを浮かべていた。

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