第47話

アルとフランは翌日、手配されていた馬車に乗り込み街に繰り出した。

貴族街を抜け富裕層が暮らすエリアで馬車を降りる。

周囲はきっちり護衛の騎士が固めている。

「さぁ。行きましょうか」

フランは気にした様子もなくそう言ってアルの手をとって歩きだした。

色々な店を覗き質問をする。

マルコシアス王国での出来事が入れ替わった形だが嫌な気持ちにはならなかった。

フランも笑顔をみせていることからこの時間を楽しんでくれているようだ。

アルはフランの助言を受けつついくつかのお店で母親であるエルドラのお土産を購入した。

正直、何が喜ばれるかわからないのでフランの助言は大いに助かった。

買った品は後で城に届けてくれるとのことでそのまま探索を続ける。

「そろそろ休憩しませんか?」

アルはフランにそう提案する。

「でしたらお勧めのお店があります」

「お願いします」

連れていかれたのはおしゃれな喫茶店だった。

何を頼んだらいいのかわからなかったのでフランにお任せした。

しばらくして届いたのは紅茶とパンケーキだった。

「美味しそうですね」

「ここのお店は私のお気に入りなんですよ」

パンケーキには贅沢にも蜂蜜がかけられている。

まずは紅茶を一口飲む。

少し苦味があるがすっきりとした味だった。

フォークを手にパンケーキを口に運ぶ蜂蜜の甘味がよく感じられた。

紅茶と交互に食べることを想定しているのだろう。

非常にバランスのとれた組み合わせだ。

フランがお気に入りと言ったのも納得である。

気がつけば紅茶もパンケーキもなくなっていた。

「おかわりしますか?」

「いえ。あまり食べ過ぎると昼食が入らなくなりそうなので」

「そうですね・・・。では探索に戻りましょうか」

アルとフランは再び街の探索に戻る。

再びフランに解説をしてもらいつつ街を巡ればあっという間に時間が過ぎていった。

「アルフレッド様。よろしければこちらのお店でご飯を食べていきませんか?」

フランが提案したお店はいかにも上流界層に好まれそうなお店だった。

「お任せします」

入店すると個室に案内される。

メニューは存在しなかったがフランは手慣れた様子で注文を済ませていた。

出てきたのはコース料理である。

アルは前世で習った錆びかけたマナーを思い出しつつ

料理に手をつける。

料理はとても美味しかったのだがこういった形式は慣れていないこともあり疲労感を覚える。

「ふふ。アルフレッド様でも出来ないことがあるのですね」

どうやらフランからみたらダメだったようだ。

「今後のことを考えればマナーを学ぶ必要があるでしょう。先生を紹介しますね」

「よろしくお願いします」

アルは力なくそう言うしかなかった。

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