第49話

貴族や王族が手袋を投げつける行為には次のような意味がある。

決闘の申し込みだ。

お互いのプライドをかけ決闘の結果を尊重する。

そのような決まりだ。

「では、詳細を決めてしまいましょう」

どういう形で決闘をするかは受けた側が決める。

「そうですね・・・。ここは剣で勝負しましょうか」

「よかろう。手加減などせぬからな」

「では、場所を移しましょう」

こんな街中で決闘などできない。

探索の途中ではあったが、城に引き返すことになった。

普段、ヒンメルン王国の騎士達が訓練している訓練場を借りて決闘を行うことになった。

訓練場には多くの騎士が集まっているだけでなくマーカスとジェイクの姿もあった。

アルは気負うことなく軽く準備運動をする。

剣を振るうのは久しぶりだがフランにカッコ悪いところをみせるわけにもいかない。

やるからには全力で相手をするつもりだ。

お互いに準備が終わり対峙する。

審判であるヒンメルン王国の騎士団長がてを振り下ろすと同時に「はじめ」と宣言する。

ウェスカーは初手で突っ込んでくる。

スピード早くなく非常にゆったりとしたペースだった。

アルは油断せずにじっくりとウェスカーを観察する。

何か策があるのだろうか?

ウェスカーがアルの元までたどり着き剣を振るってくる。

アルは上段から振り下ろされた剣を受け止める。

ウェスカーの剣は型も何もなくただ、力任せに振るっているだけだ。

アルは冷静に衝撃を受け流す。

子供だと思って侮っていたウェスカーは簡単に勝てると思っていたのだろう。

アルはどうしたものかと思い悩む。

一方的に叩き潰すこともできるだろう。

だが、あまりにも一方的な展開になればウェスカーの面子を潰すことになるだろう。

そうなればマルコシアス王国だけでなくヒンメルン王国にまで迷惑をかけることになりかねない。

次々に剣を繰り出してくるウェスカーは「ぜぇぜぇ」と息を荒くしている。

どうしたものかと悩んでいるとウェスカーの剣が明後日の方向に吹き飛んでいった。

アルは仕方なしにウェスカーに剣を突きつける。

「そこまで。勝者はアルフレッド様」

「ぐぬぬ。儂はまだ負けてない」

ウェスカーはそう言うとあろうことか魔法を放ってくる。

その威力は子供の遊びのようなものだった。

アルは避けながら距離をとる。

どうするかと悩んでいると救いの手は観戦していたはずのジェイクからもたらされた。

ものすごいペースで距離を積めウェスカーを殴り付ける。

あまりの出来事にアルは思わず固まってしまった。

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