第126話

独立できると聞いてマンハッタンをはじめ集まった商人に傭兵達は歓喜に震えていた。

「本当に独立できるのですか?」

「えぇ。課題はありますけどね」

「そんなことは些細な問題です」

サーキス王国の統治は力で押さえつけ言うことを聞かせてきたという面が強いようだ。

商人達は防衛費という名目でかなりの税を取られていたようで不満はかなりあったようだ。

それだけでなくサーキス王国の駐屯軍はかなり好き放題していたようで住民からはかなり嫌われていた。

そう言った楔から解き放たれると聞いて街を上げてのお祭り騒ぎとなった。

この流れは周辺の街や村にも伝わり地域全体が活気づいていた。

治安を維持するための人員であったが思った以上に応募者が殺到する形となった。

人々からこの地域を守るのだという強い意思を感じる。

ヒンメルン王国の騎士達は治安を維持しつつ徹底した指導を施した。

それは地獄ともいえるような訓練メニューであった。

だが、希望に燃える人々はその訓練メニューを黙々とこなしていた。

サーキス王国の駐屯軍はその様子をただ眺めるしかできなかった。

「このまま好き勝手やらせていいんですか?」

「先ほど指令が届いた。我々は撤収する」

「撤収?何故です」

「本国の立場が悪いらしい。植民地の利益を失うのは痛いが帰還して本国防衛に参加せよとのことだ」

サーキス王国が違法な薬物を生成してばら蒔いた。

その噂は瞬く間に西方諸国に広まった。

その結果、サーキス王国の立場はかなり悪くなっていた。

この噂を広めたのはヒンメルン王国である。

ヒンメルン王国は古くは騎士の国として誠実が売りの国家である。

発信元がそのヒンメルン王国であった為、各国はすんなりとその情報を信じたのである。

サーキス王国は国際的な信用がガタ落ちとなり存続の危機に貧していた。

「とにかく、迎えの船が来たら撤収だ。ここをいつでも引き払えるように準備しておけ」

「わかりました」

サーキス王国の駐屯軍は迎えの船がやってくると持ち出せるだけの財貨を積み込み去っていった。

支配者のいなくなったこの地域であるがマーラン共和国と名を新たにした。

地域の混乱に漬け込むように海賊や山賊に盗賊などが押し寄せたが強力なマルコシアス王国艦隊とヒンメルン王国の騎士達の活躍によって混乱期を無事に抜け出すことができた。

マーラン共和国が誕生したことにより他の植民地の人々にも少なからず影響を与えることになる。

各地で独立運動が広がり西方諸国はその対処に頭を悩ませることになるがそれも時代の流れというやつであろう。

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