第125話
「例え小さな歪みでもそれが積み重なれば大きな歪みになる。現に住民の方達はサーキス王国の駐屯軍に不信感を持っているのではないですか?」
「確かに細々としたことに不満があるのは確かです。今回の件は本来なら駐屯軍が対処すべき事案でしょう」
「信頼を築くのは大変ですが信頼を失うのは一瞬です。僕としては取引相手である皆さんが困っているなら手を差しのべたい。それだけですよ」
「アルフレッド様がいなければ我々は取り返しのつかない事態になるまで何もできなかったでしょう。改めて感謝申し上げます」
「大変なのはこれからです。頑張りましょう」
サーキス王国の駐屯軍を牽制したことで新たな薬の供給を一時的に止めているがそれも長くは続かないだろう。
だが、いつまでも止めておくのは難しいはずだ。
アル達にできることは中毒者を隔離し売人を捕まえて少しでも被害を押さえることだけだ。
2ヶ月が経過した。
ヒンメルン王国に戻った艦隊が援軍を連れて戻ってきた。
援軍としてやってきたのはヒンメルン王国の騎士達だ。
「遠路はるばるご苦労様です」
「アルフレッド様もご無事のようで・・・」
どうやら心配をかけてしまったようだ。
「僕はこの通り元気ですよ」
「フランソワ様が寂しがってましたよ」
「うっ・・・」
必要だから残ったがフランのことを放置する形になってしまった。
後でフォローしておかなければ色々まずい気がする。
「さて。釘を刺すのはこれぐらいにして報告です」
「聞きましょう」
「ジェイク様が調査をした結果、例の薬を生産していたのはサーキス王国でした」
「外れていてくれればと思いましたがサーキス王国が犯人でしたか」
「現地の畑は徹底的に焼却しました」
「ありがとうございます」
「それでこの地ですがサーキス王国には任せておけないという話になりました」
「ヒンメルン王国は植民地支配に否定的でしたね」
「はい。なのでこの地域については独立してもらおうと考えています」
「サーキス王国がそれを認めますか?」
「上の方で話はついておりますので」
「なるほど。では、後は現地の治安維持をどうするかですね」
「しばらくは我々が支援いたしますが最終的には現地の人々に任せることになるかと」
「商会を通して現在、契約している傭兵には打診してみましょう。後は希望者を募って軍事訓練ですね」
「そちらは我々が受け持ちましょう」
ヒンメルン王国の騎士による指導。
それは恵まれていると同時に地獄の幕開けだった。
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