第124話

調査権を強引に勝ち取ったアル達は薬物依存症の人々を徹底的に隔離していった。

隔離してそれで終わりではない。

隔離した人を世話をする人も必要だし各種生活に必要な物資の確保も必要だ。

どちらもマルハッタンをはじめ地元の商会が手配してくれている。

「どれぐらいの期間を隔離したらいいのか・・・」

「そうですね。少なくとも薬を欲しがらなくなるまでは・・・。それに、隔離期間を終えても監視は必要です。また薬に走られては意味がないですから」

「なるほど・・・。それほどまでに厄介な代物だとは思っていませんでした」

この世界では依存症の脅威というものがまだわかっていないのだろう。

まぁ、前世での地球でも脅威であるとわかっていても手を出す人が後を絶たなかったのだが・・・。

「売人の捕縛状況はどうですか?」

「そちらも順調と言いたいところですが暗黒街については中々・・・」

「ギャングを全て捕まえるわけにもいきませんしね」

ネフタルの頭を捕縛した余波はあちらこちらに及んだ。

ネフタルの支配していた地域が空白化したことによる縄張り争い。

脅威がなくなったことによる犯罪行為の横行。

例を挙げればきりがない。

「とはいえ、いずれは解体しなければ・・・」

「そうですね。ですが人数が足りません」

傭兵を雇っているとはいえアンソン全体をカバーするには人数が足りていない。

サーキス王国の駐屯軍が協力してくれれば別だが期待できないだろう。

そうなると現状では打てる手がほとんどない。

暗黒街については放置するしかないだろう。

「周辺国にも被害が広がっているとのことでしたがそちらはどうですか?」

「伝手を使って薬の危険性については伝えましたが・・・。どうも動きが鈍いようです」

「そうですか・・・。そちらについてもこれ以上できることはありそうにないですね」

周辺の国々は植民地になるのは免れているがそれでも西方の国々の影響から逃れられているわけではない。

不平等条約を結ばされている国もある。

西方の国々にいい感情を持っていないのは明らかだ。

「出来ることを1つ1つやっていきましょう」

ヒンメルン王国に帰した艦隊にはジェイク宛の手紙を預けてある。

ジェイクがこの状況を知れば何かしらの手を打ってくれるはずだ。

今はそれを信じて耐えるしかない。

「アルフレッド様。1つ聞いてもいいでしょうか?」

「なんでしょう?」

「どうしてここまでしてくれるのですか?」

「そうですね・・・」

マンハッタンの質問にアルは自分の考えを伝えることにした。

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