第123話

ネフタルのボスが告げた薬の入手先はサーキス王国の駐屯軍だった。

「アルフレッド様。どうしますか?」

「もちろん乗りこみますよ」

「さすがに危険では?」

「全員を相手にする必要はありません。今回は我々が薬の存在を知っていると牽制できれば十分です」

「それでも私としては反対です。現状の戦力ではアルフレッド様を守りきれない可能性があります」

「では、薬の蔓延を見逃しますか?」

「それは・・・」

薬の蔓延を見逃すわけにはいかない。

その為にはサーキス王国の駐屯軍を牽制する必要があった。

「これは決定です。相手も馬鹿ではないでしょう」

サーキス王国の本国はマルコシアス王国とヒンメルン王国の連合軍に負けたのだ。

駐屯軍がその負けた相手の王族相手に問題を起こせば本国の立場はもっと悪くなる。

そんな愚は犯さないはずだ。

アルはサーキス王国の駐屯軍に対して正規の手段で会談を要求した。

それをサーキス王国の駐屯軍は受け入れた。

「お初目にかかります。この地を取り仕切っておりますマリオンと申します」

「アルフレッド・ド・マルコシアスです」

「マルコシアス王国の王族が私共に何のご用でしょうか?」

「これに見覚えは?」

アルは懐から薬のサンプルを取り出す。

「これは・・・。巷で最近流行っている薬ですね」

「対応が緩いように感じますが?」

「我々としても危惧しておりますが何分人数に限りがありますので・・・」

暗にお前達のせいで人数が足りていないといってくる。

「サーキス王国にはこの地を治めるものとして責任があるはずですが?」

「言いたいことはわかります。ですが、先ほどももうした通り人数が足りないのです」

「では、我々が調査に協力しましょう」

「それには及びません。マルコシアス王国の王族の方に動いてもらうほどでは・・・」

「いえいえ。困ったときはお互い様ですから。お忙しいみたいなのでこれで失礼しますね」

アルは話しは終わったとばかりに席を立つ。

マリオンは笑顔でそれを見送ることしかできなかった。




「ぐっ。憎々しいマルコシアス王国め」

「マリオン様。どうしますか?」

「しばらくは薬の供給を止めろ。下手に動けば相手に名目を与えることになる」

「ですが、それでは本国の要求に答えられませんが?」

「それでもだ。ここで弱みを見せれば最悪の事態も起こり得る」

「最悪の事態ですか?」

「この地の住民は我々の支配から抜け出したがっている。独立運動なんてされたら大問題だ」

駐留する人員が減っていて以前と違い全てを押さえるのが難しくなってきている。

今、独立運動をされれば押さえきれない可能性があった。

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