第128話

アルは10歳の誕生日を向かえていた。

この日はマルコシアス王国から両親であるマーカスとエルドラも駆けつけてくれた。

思い返せばこの1年は何かと忙しかった。

サーキス王国の植民地であったマーラン共和国の独立などは記憶に新しいところであう。

「アル?何を考えているの?」

「フラン・・・。この1年でのことを色々ね」

「半分以上この国を離れていたものね」

「もしかして怒ってる?」

「いいえ。旦那様がお仕事お仕事で構ってくれないとか思ってませんよ?」

「怒ってるよね・・・。悪かったって」

「くすくす。冗談です。王族に生まれた以上こういうこともあると理解していますから」

それでもフランに寂しい思いをさせたのは事実だ。

反省すべきことだろう。

「今日はアルの誕生日です。楽しんでくださいね」

「うん・・・。でも、その前に・・・」

アルはぎゅっとフランを抱き締める。

「ちょっと・・・。アル・・・?」

「ごめんね。そしてこれからもよろしく」

「はい・・・。私はアルの物ですから」

フランは顔を真っ赤にしている。

考えてみればフランがくっついてきたことはあってもアルからこういったスキンシップを図ったのははじめてだ。

「さぁ。皆が待ってる。行こうか」

「はい・・・」

その後は家族との暖かい時間を過ごした。



その頃、サーキス王国では国民がデモを起こしていた。

「民の生活を省みない貴族と王族に鉄槌を」

「我々はお前らの統治を認めない」

その声はサーキス王国各地で上がっていた。

「ぐぬぬ。愚民共め。我らの苦労を知りもせず・・・」

「陛下。このままでは国が崩壊してしまいます」

「わかっておる。兵士を投入して散会させろ」

「はっ」

ここでサーキス王国は最悪の決断を下した。

兵士と民がぶつかり双方に死亡者と怪我人が大量に発生したのである。

民達は本格的に王族と貴族を嫌悪して反政府組織を組織した。

最低限、確保されていた食料の供給も悪化し飢えで苦しみ民も現れた。

それに対して貴族や王族は強引に食料を摘発して自分達だけはしっかりと食事を取っていた。

それがさらに民を怒らせることになる。

反政府組織の行動は過激化し食料を備蓄している倉庫の襲撃が頻繁に起こるようになった。

兵士達も警備を厳重にしていたが数の暴力でこられては止めきれるものではない。

サーキス王国は実質、無法地帯と成り果てていた。

周辺国も情報を入手していたがどの国も静観していたのである。

これはサーキス王国がばら蒔いた違法薬物の対応に手間取っていたが原因の1つである。

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