第111話

夕食も食べ終わり後は寝るだけだ。

フランはこの時間は本を読んでいることが多い。

今日も普段と変わらずアルが翻訳した本に目を通していた。

「フラン」

「どうしたの?」

「僕に何か出来ることはないかな?」

「急にどうしたんですか?」

「今日は迷惑をかけちゃったから・・・」

「迷惑だなんて・・・。でも、そうですね。せっかくですから抱っこさせてください」

「抱っこ・・・?そんなことでいいの?」

「はい・・・」

フランは本を置くと手招きする。

アルは誘導されるようにすっぽりとフランの手の中に収まった。

ぎゅっとフランに抱き締められる。

その際、顔が柔らかい物で包まれる。

「ちょっと、フラン・・・?」

見上げてみればフランは蕩けたような顔をしている。

口からは「えへへ。アルだぁ・・・」と漏れていた。

どうやら自分の世界に入ってしまったようだ。

アルは諦めてじっとしているしかなかった。

それからしばらくして解放されたのだがフランから要望が出された。

「これからも定期的に抱っこしていいですか?」

「フランがしたいならいいよ」

アルは顔を赤くしつつもそう答えるしかなかった。

これでフランが喜んでくれるなら安いものである。

ちょっとした事件?はあったものの夜も更けてきたので寝ることにしたアルとフランはベッドに横になる。

が、フランがアルに抱きついてくる。

「フラン・・・?」

「せっかくならもっとアルを身近に感じていたいので。ダメですか・・・?」

「ダメじゃないけど・・・」

上目使いに聞いてくるのは卑怯だと思う。

口には出さないが好きな相手にそんなお願いをされたら断れない。

が、アルはぴったりくっついたフランが気になって眠ることができなかった。

隣では幸せそうな顔をしてフランが眠っている。

フランがここまでスキンシップに飢えているとは思っていなかった。

今まではずっと我慢していたのかもしれない。

それを考えれば反省すべきだろう。

そんなことを考えていると少しずつ眠気がやってきていつの間にか眠ってしまっていた。



ちゅんちゅんと鳥の声がしてフランは目を覚ます。

ぴたっとくっつくようにして眠っていたアルはまだ目覚めていないようだ。

昨日は我儘を色々言ってしまったがアルに嫌われていないだろうか?

そう思うと同時にもっと色々してみたいとも思ってしまう。

フランも年頃の女の子なのだ。

好きな相手とごにょごにょしてみたいという欲求はあるのだ。

だが、アルに打ち明けたら嫌われるのではないかと不安で打ち明ける勇気がなかった。

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