第110話

アルとフランは馬に駆けさせ森にまでやってきていた。

小川が流れる場所までやってくると馬を降り適当な木に馬を繋ぐ。

今日は少し暑いのだが森と小川の効果なのかこの辺りはずいぶんと涼しい。

「アル。せっかくですから少し川で遊びませんか?」

「いいですよ」

靴を脱ぎ足を川に入れると思っていた以上に冷たかった。

「こうしてのんびりするのもいいですね」

「そうですね。普段は色々と仕事がありますから」

アルもフランも責任ある立場である。

それ故、普段はお互いに忙しいのだ。

「お仕事のことは忘れて楽しみましょう」

アルとフランはこの状況を楽しむことにした。

しばらくまったりした時間を過ごした後、アルとフランは揃って川の近くに腰掛ける。

アルは使用人に用意してもらったバスケットをアイテムボックスから取り出す。

「それ。朝の・・・?」

「はい。せっかくなら外で食事でもと思いまして」

中に入っていたのはサンドイッチだった。

「今、飲み物も用意しますね」

アイテムボックスから茶器を取り出し、魔法でお湯を出すとその場で紅茶を入れる。

「アルがいると色々便利ですね」

「そうですか?」

「荷物を気にしなくていいですから」

普通は茶器を運ぶのにも専用の馬車を用意したりと手間がかかる。

それを無視できるアルのアイテムボックスは反則と言えるだろう。

「さて。それではいただきましょうか」

「はい」

2人は仲良くサンドイッチに手を付ける。

料理人の腕は確かで味は満足のいくものだった。




「アル。よければ少し寝ていきませんか?」

「いいですけど・・・」

「では、こちらに」

フランは隣を示してくるのでそこに座る。

フランは無言で膝をぽんぽんと叩いている。

どうやら膝枕をしたいようだ。

「お邪魔します」

アルはフランの膝に頭をそっと乗せる。

アルの頭をフランが優しく撫でてくる。

フランの顔を見れば嬉しそうだ。

「おやすみなさい」

「はい。おやすみなさい」

アルは心地よさを覚えつつ意識を手放した。




アルが目を覚ましたのは日がだいぶ傾いてきている時間だった。

「ごめん。寝すぎた・・・」

「いえ。それだけお疲れだったんですよ」

「そうかもしれないけど・・・」

フランはずっと膝枕をしてくれていたのだろう。

子供の体重とはいえ大変だったのではないだろうか。

そう思うと申し訳なくなってくる。

「暗くなる前に帰りましょうか」

「そうですね・・・」

アルは後で何かしら埋め合わせをしようと決めて城に戻るために馬にまたがった。


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