第112話

アルとフランのもとに一通の招待状が届いた。

差出人はアヴェント商会のジェフリーだ。

「どうしようか?」

「どうしようって・・・。差出人はジェフリーさんだけど実質的な相手はウィンブルの王族よ?行くしかないと思うわ」

ウィンブルは内陸にある歴史のある王国である。

周辺国にもそれなりの影響力があり無視するわけにもいかない相手だ。

「だよね・・・。ちょっと義父さんに相談してくる」

「いってらっしゃい」

アルは部屋を出るとジェイクのもとに向かった。

「アルが訪ねてくるのは珍しいな。何かあったか?」

この頃になると義理の父であるジェイクと義理の母であるセリュスも愛称でアルと呼び捨てにしていた。

「招待状が届きまして・・・」

「相手は誰だ?」

「差出人はアヴェント商会のジェフリーですが相手はウィンブルの王族です」

「そうか・・・。無視するわけにもいかない相手だな。行ってくるといい。護衛のほうはこちらで用意しておく」

「ありがとうございます」

準備は2日後には済み、アルとフランは馬車に乗ってヒンメルン王国を出立した。

2週間ほど馬車での旅を続けウィンブル王国に入る。

ウィンブル王国に入って最初の街でジェフリーが待っていた。

「お久しぶりです」

「お久しぶりです。こんな場所で会えるとは思っていませんでした」

ジェフリーの所属するアヴェント商会はウィンブルに所属している。

だが、ジェフリーは普段ヒンメルン王国の港町であるスーウェンに滞在しているのだ。

「今回はお二人を迎えるために接待役として呼び戻されたんです」

「わざわざすみません」

「いえいえ。こうして接待役を任されたのは栄誉あることですから。道中の宿の手配はすんでいますのでお任せください」

「お世話になります」

ジェフリーの手配は完璧だった。

時間にも余裕がありさすが凄腕の商人である。

1週間ほどウィンブル王国を旅すると巨大な防壁が見えてくる。

「もしかして・・・」

「どうやら着いたようね」

ウィンブルの王都、ウィンストンは長大な防壁に囲まれた城塞都市だった。

門の前には長蛇の列ができている。

だが、アル達はその横を通り抜けジェフリーが手続きするとそのまま通された。

門を抜けた先は人で溢れていた。

アル達の乗る馬車はその中をゆっくりと進んでいく。

そのまま馬車は進み庶民街、富裕層、貴族街を抜け王城に真っ直ぐ向かっていった。

どうやらこのままウェンブルの王族に会うことになりそうだ。

今回のために贈答品も用意している。

心配なのはマナーだが大きな失敗をしなければ大丈夫だと自分に言い聞かせた。

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