第100話

もうじきフランの誕生日である。

アルはアル計画のために街に存在する楽団を訪ねていた。

最初は断られたのだが何度も頼み込みなんとか承諾を得た。

それとは別に誕生日プレゼントも用意する。

準備万端でフランの誕生日を向かえた。

アルはフランと共にオープン式の馬車に乗り込み集まった街の人達に手を振る。

ある広場に通りかかるとヴァイオリンの音色が聞こえてくる。

それだけでなく様々な楽器の音が次々に鳴り響く。

アルがフランの為に楽団に依頼したのはフラッシュモブだった。

突然のことに街の人達も驚いているようだが悪い雰囲気ではない。

「素敵な演出ね」

「そうだね」

アルはフランの反応を見てやってよかったなと思う。

馬車はぐるりと街を1周して王城に戻ってきた。

休むために自分達の部屋に戻る。

ここであらかじめ買っておいた花束をアイテムボックスから取り出す。

「フラン。誕生日おめでとう」

「ありがとう」

フランは嬉しそうに花束を受けとる。

だが、プレゼントはそれだけではなかった。

細工師に頼んで作ってもらった綺麗な細工のされた箱を取り出す。

「これも」

「綺麗な箱ね。開けてみてもいい?」

「うん」

フランが箱を開けると音楽がなりはじめる。

アルが用意した箱の正体はオルゴールだった。

「この曲・・・」

オルゴールの奏でる音色は街で突然流れてきた曲と同じだった。

「アル・・・。街のもひょっとして?」

「うん。楽団の人達に依頼を出してね」

ここまできて隠し通す意味もないので正直に答える。

「もう・・・。どれだけ私を喜ばせるの?」

「あまり一緒にいられないからね。埋め合わせはしないと・・・」

「もう・・・。大好き」

「僕もだよ。愛してる」

自然と2人の距離は近づき口づけを交わした。

「あまり待たせるの悪いわね」

「そうだね」

この後は家族での食事会が待っているのだ。

2人は着替えをすませて食堂に向かう。

「フラン。誕生日おめでとう」

「ありがとうございます」

「今日の為に色々用意させたんだ。楽しんでくれ」

ジェイクがそう言うと次々に料理が運ばれてくる。

普段の食事も手を抜いているわけではないがそれでも今日の料理は力を入れすぎだろう。

そう思うぐらい豪華な食事だった。

部屋に戻ってきたアルとフランはベッドに横になっていた。

「食べ過ぎた・・・」

「私も・・・」

普段食べられない料理についつい手がのびて食べすぎてしまったのだ。

まぁ、たまの贅沢にこういう日があってもいいだろう。

そう思うアルとフランであった。

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