第101話

アルはアヴェント商会のジェフリーと共に交易のために再び船に乗っていた。

「今回もよろしくお願いします」

「こちらこそ」

前回の交易の結果は中々良かったようでジェフリーは上機嫌だ。

アルとしても十分な報酬が約束されているのでお互いにウィンウィンの関係だ。

航海は順調に進むかに思われたがアル達の前に大規模な所属不明の艦隊が立ちふさがった。

規格がバラバラであるが数が多いため油断するわけにはいかない。

所属不明の艦隊は手旗信号を無視して接近してくる。

「大丈夫でしょうか?」

ジェフリーが不安そうにそう聞いてくる。

「全力は尽くしますがなんとも言えませんね」

アルは正直にそう答えた。

性能はこちらが上とはいえ、サーキス王国の例がある。

数で押されれば対応しきれない可能性があるのだ。

「アルフレッド様。もうじき射程に入ります」

「射程に入り次第、砲撃開始。距離に気を付けるように」

アルの指示で砲撃が開始される。

各船は距離を保ちつつ次々に砲撃を開始する。

相手の船は犠牲を出しつつもなお近づこうと進路を維持している。

アルはそこで指示を出す。

「距離が近い船は全力で離脱。他の船はフォローするように」

戦闘は長時間にわたり結局、日暮れまで所属不明の艦隊との戦闘は続いた。

その間に沈めた相手の船は数えるのも馬鹿らしい数にのぼった。

「ふぅ・・・。なんとかなりましたね」

「見事な手腕でした」

「最低限の見張りを残して休憩してください」

「最低限の見張りを残して休憩に入ります」

今回の所属不明の艦隊との戦闘は緊張しっぱなしだった。

休めるときに休まないと今後の航海に支障をきたすだろう。

休めるときに休ませるのも指揮官の仕事だった。



「ちくしょう。これだけの数を動員したってのに戦果なしかよ」

「やばい相手でしたね」

「そうだな。沈んだ連中は寄せ集めだがそれでもこの結果は威信に関わる」

アル達を襲った所属不明の艦隊の正体は大規模な海賊連合だった。

自分達のテリトリーで手も足もでない相手がいるというのは面子が丸潰れだ。

普段はそれぞれバラバラに仕事をしているがマルコシアス王国艦隊に一泡吹かせてやろうと連合を組んだのだ。

それだというのに相手の船を1隻も沈めることができなかった。

「悪いが俺達は抜けるぜ。あんなの相手にしてられるか」

そう1人が告げると次々に離脱者がでる。

「船長。あの艦隊に手を出すはのもうやめましょう」

「そうだな・・・」

彼等も命は大事なのだ。

面子は丸潰れだが他に狙える獲物はいくつもあるのだ。

無理して相手をする必要もなかった。

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