第99話

交易品の詰め替え作業も無事終わりジェフリーが声をかけてくる。

「アルフレッド様。ご紹介します。こちら今回の取引相手であるジュエリー商会のマルハッタン殿です」

「はじめまして。アルフレッド・ド・マルコシアスです」

「マルハッタンです。今回の取引は満足のいくものでした。これからもお付き合いいただけると嬉しいです」

「こちらこそ」

アルとマルハッタンは握手を交わす。

「この辺もずいぶん物騒になりましたので航海の安全をお祈りしております」

「物騒になった理由はわかりますか?」

「なんでもサーキス王国の本土で何かあったようです。治安維持をしていた艦隊のほとんどが引き上げてしまいました」

アルとしては何とも言えない。

サーキス王国と戦争した当事国であるからだ。

「あぁ・・・。見慣れない艦隊とはいえ、何故ここまで襲われるのかと思ったらそんな理由があったのですね」

「何だか申し訳ない」

「アルフレッド殿が謝ることでは・・・」

「いえ。このような形でうちの国が影響を及ぼしていたとは・・・」

「影響を及ぼすとは?」

「アルフレッド殿はサーキス王国と戦争した当事国の王族です」

「そうでしたか。まぁ、済んだことは仕方ありません。それに悪いことだけではないですから」

「どういうことですか?」

「サーキス王国は治安を守る代わりにとずいぶんと無茶な要求ばかりしてきましてね・・・。我々としてはとんとんといったところでしょうか」

サーキス王国はこちらでも嫌われているようだ。

まぁ、自業自得という奴だろう。

「では、商売も無事終わったところで失礼します」

マンハッタンはそう言うとボートに乗り港に戻っていった。

「我々も行きましょうか」

「そうですね」

アル達はヒンメルン王国に向けて港を後にした。

帰りの道中も海賊には襲われたが正規軍はこちらを見ても襲ってくることはなかった。




航海は順調に進みヒンメルン王国の海域に入った。

途中、警戒艦隊と遭遇したが問題は起きていないようだ。

船は無事にスーウェンの港町に入る。

運んできた交易品の積み降ろしはすぐに開始された。

ジェフリーは改めてお礼を言ってくる。

「今回は皆様のおかげで無事に商品を運ぶことができました。今後もお願いしたいのですが」

「こちらこそ。貴重な体験をさせていただきました。お力になれることがあればおしゃってください」

「ありがとうございます」

今後ともアヴェント商会とはよき付き合いをしていきたい。

アル達だけでは他国に赴いた際の信頼を得られないのだから。

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