第98話

途中、襲撃を受けつつもアル達は目的の港に到着した。

そこには様々な国の船が停泊しているのが見える。

港の案内人の指示に従い船を停泊させるとジェフリーが申し出てくる。

「取引の方はお任せください。アルフレッド様はどうしますか?」

「そうですね。せっっかくの異国ですし少し散歩してきます」

見たことのない建築様式で作られた街は興味を引いた。

「アルフレッド様。行くのはいいですが護衛をつけてくださいね」

「わかりました」

護衛がいることで避けられる危険もあるのだ。

それを考えれば反発する必要もない。




ボートで港町、サンソンに上陸したアルはまずは賑わっている市場を覗いてみることにした。

見たことのない野菜に果物がところせましと売られている。

「そこの兄ちゃん。うちの果物は絶品だよ」

そう言ってまだ幼い子供が声をかけてくる。

「そうですね。1つ貰っても?」

「毎度」

アルはお金を支払い果物を受けとる。

だが、そこで困ってしまった。

食べ方がわからない。

「兄ちゃんどうしたの?」

「どうやって食べたらいいのかわからなくて」

「ちょっと貸して」

そう言って果物を受けとるとあっという間に皮を剥いて見せる。

「これで大丈夫だよ」

「ありがとう」

アルは剥いてもらった果物にかぶりつく。

酸味もあるがその中に甘味もある。

「どう?」

「美味しいですね。せっかくなので5箱分貰いましょうか」

「そんなに?」

「ダメだったかな?」

「ううん。こんなに買ってくれる人、今までいなかったから」

アルは追加で代金を支払い商品を受けとるとアイテムボックスの中に仕舞い混む。

その後もアルは気になった物を試食して気に入った物を船員へのお土産として買い込んでいった。




散策を終えアルは待っていたボートに乗り船に戻ってきた。

商品の積み降ろしはまだ時間がかかるとのことでしばらくは待ちの時間だ。

アルは買ってきた品々を船員に振る舞う

船員達は感謝を伝えつつそれぞれお気になった物に手を伸ばす。

「美味しいですけど持ち帰れないのが残念ですね」

生物であるため交易品として持ち帰ることができない。

現地の物を食べられるのは船員達の数少ない特権の1つだろう。

この世界では旅客船は存在していない。

来たときにも思ったが旅をするにはこの世界の海は物騒すぎる。

マルコシアス王国の艦隊が認知されれば襲撃されるリスクは減るそうだがゼロになることはないそうだ。

ヒンメルン王国への帰路でも気を抜くことはできそうになかった。

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