第97話

かねてより交渉をしていた商会から連絡があった。

そう連絡を受けてアルはジェイクのもとを訪ねた。

「アルフレッド殿。船を出してくれるなら東の国々との交渉をしてくれるそうだ」

「そうですか・・・。では、艦隊を率いて行ってきますね」

ヒンメルン王国の船員育成も順調に進んでおり、派遣されている艦隊を交易にまわす余裕ができていた。

「すまないがよろしく頼む」

アルは手早く準備を終わらせてスーウェンの港町を目指した。

スーウェンははじめてきたときと比べて軍港と交易品の中継地点として大きく発展している。

今では大型の船舶も問題なく停泊できるほどだ。

トーマス伯爵の館に向かうと今回、同行してくれる商会の人達との顔合わせが行われた。

「アヴェント商会のジェフリーです。今回はよろしくお願いします」

「アルフレッド・ド・マルコシアスです。こちらこそお世話になります」

「噂のマルコシアス王国艦隊が動いてくれるなら安心ですね」

「噂ですか?」

「サーキス王国の艦隊を蹴散らしたマルコシアス王国艦隊は最強だと言われてるんですよ」

「そこまで言っていただけるなら頑張らないわけにはいきませんね」

「頼りにしていますよ。危険は海賊だけではないですから」

「海賊だけでない?」

「交易品を狙って正規軍が略奪に走ることもあるんです」

「なるほど・・・」

どうやら今回の交易は一筋縄ではいかないようだ。

「それではそろそろ行きましょうか」

「そうですね。金は時なりですから」

アル達が船に向かうと荷物の積み込みはもう終わっておりいつでも出港できる状態だった。

ルートとしては一度南下してそこから東に進むことになる。

南下するまでは順調だったのだが進路を東にとってからが大変だった。

海賊の襲撃に見たことのない国旗を掲げた船。

自分達を鴨だとでも思っているのかとにかく襲われる回数が多い。

その度にアームストロング砲で警告しことなきを得ていた。

「いやぁ。それにしても凄いですね」

アルの隣でジェフリーがそう言葉を漏らす。

「これだけ襲われるとまともに交易なんてできないのでは?」

「見たことのない艦隊であることが襲われている原因の一部ですが、普段なら交易品を差し出すことでなんとかしていたんです」

「それでは被害が大きいのでは?」

「そうなんです。そのせいで運んだ商品の値段をあげるしかなかったんですよ」

交易品の値段が高い理由はそんなところにもあったのかと納得する。

「今回は大儲けできますよ。お声をおかけしてよかった」

ジェフリーは満足そうにそう言いきった。

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