第40話

しばらくしてフランが顔を見せた。

「すみません。お待たせしてしまいましたか?」

「いいのよ。女の子は身だしなみに時間がかかるんだから」

エルドラがそう援護する。

「僕がもっと気をつかうべきでした」

アルはそう言って謝罪する。

2人の時間がもっと続けばいいとぎりぎりまで引き伸ばしたアルの落ち度だ。

「まぁまぁ。謝罪はその辺でいいだろう。すぐに料理を運ばせる」

マーカスがそう言うと使用人はてきぱきと動き料理を運んでくる。

地元で取れる野菜を使ったサラダ。

魚介から丁寧に出汁を取ったスープ。

バケットに入れられたパン。

王族の食事としては質素かもしれいながマルコシアス王国ではこれが普通だった。

それにトーマスもフランも文句を言うことはなかった。

それもそのはずで、昨晩、フランが普段通りの食事をと頼んだからだった。

「このスープは絶品ですね。シェフの腕がよっぽどいいのでしょう」

「そう言っていただけるとシェフも喜びます」

「そうですな・・・。私も港町を納める領主として魚介を良く食べますがここまで丁寧に作られたスープははじめて食べます。レシピを教えてもらいたいぐらいです」

「ふむ・・・。後でシェフに伝えておきましょう」

マルコシアス王国としてはレシピを公開するのに支障はない。

後は、シェフの判断次第だ。

だが、シェフの性格を考えると自分の料理が広く伝わるのを喜びそうな気がする。

以前、アルが街で食べた料理の再現を頼んだ際は、自らその料理屋に足を運び、頼み込んで技術を磨く料理に命を捧げているような性格なのだ。

シェフのためにも新しい食材を仕入れられるといいのだが・・・。

今回の交易では間に合わなかったが商会に頼み大陸で流通している野菜の種などを頼んでいる。

マルコシアス王国で育つかどうかはまだわからないが少しでも多くの種類の食材が手に入ればシェフも喜ぶだろう。

食事は何事もなく終わりアルは自室に下がり早々に就寝した。



朝食の席で皆の顔を見れば全員、眠そうな顔をしている。

理由を聞けばマーカスとトーマスは夜遅くまでお酒を飲んでいたようだ。

若干、顔色も悪いので二日酔いなのかもしれない。

エルドラとフランは共通の話題で盛り上がりすぎてしまったと恥ずかしそうに言っていた。

なお、内容については乙女の秘密とのことで教えてくれなかった。

まぁ、お客人に退屈させるよりかはいいかもしれないが、ほどほどにしてほしいところである。

フランはまだ成人前だが、他の人達はいい歳をした大人なのだから・・・。

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