第41話

朝食も食べ終わり、少し休憩をしてからアルとフランは街に繰り出した。

「何か気になるところはありますか?」

「そうですね・・・。はじめて訪れる街ですからどれも新鮮です」

そう言うフランは本当に楽しそうだ。

護衛はいるがうまく街に溶け込み意識して見なければどこにいるかわからないだろう。

フランはきょろきょろしつつも気になった店を覗き込み「あれはなに?これは?」と興味津々で聞いてくる。

国が変われば物もかわるというわけではないが、同じ用途で使うものでも形が違っていたりするようだ。

アルはその質問に1つ1つ丁寧に答えていった。

「ふぅ・・・。結構歩きましたね」

「そうですね。少し休憩しましょうか」

アルは学生だった頃に何度かお世話になったことのあるお店にフランを案内した。

頼んだのは無難に紅茶だ。

少量ではあるが商人が大陸から茶葉を仕入れていたがこの店で出している紅茶は国内産だ。

「この茶葉はどこの物ですか?」

「お口にあいませんでしたか?」

「いえ。とっても美味しいです。でも、飲んだことのない味でしたので」

「なるほど・・・。この茶葉はマルコシアス王国産です」

「輸出はされないのですか?」

「残念ながら輸出できるほど確保できるわけではないんですよ」

島国であるため土地が限られている。

毎日食べる野菜や小麦を育てるので精一杯だ。

お茶の木は防風林をかねて自家用に育てられているぐらいしかないのだ。

この店で出されている紅茶は店主が交渉して農民から買い取って出しているのだ。

手間を考えればほとんど儲けなどない。

趣味のような店だ。

それでも一般の国民からすればビックリするような値段だ。

この店の利用者は裕福であったりちょっと奮発したい国民が利用する店なのだ。

「そうですか・・・。とっても美味しいのに残念です」

「アルフレッド様。口を挟んで申し訳ない」

そう言って店主が話しかけてくる。

「なにかありましたか?」

「いえね。お力になれるかもしれないと思ったものですから」

「なるほど。お話を聞きましょう」

「この島から少し南下すると無人島があるのはご存じですか?」

アルは頭の中に地図を展開する。

「たしか、暮らすには少々狭いとかで放置されている島がありますね」

「そうです。ですが、そこにお茶の木を植えられないかと思いまして」

住むには向かないが何かを栽培することは可能だろう。

「悪い話ではないですが・・・」

アルの独断で決めるわけにはいかない。

「考えてもらえるだけでもありがたいです」

「でも、何故僕にその話を?」

「アルフレッド様は何度かうちに来てくれていますし、私としては少しでも仕入れ値を下げたいんです。量が確保できれば加工費用なども下がりますから」

現在、紅茶に加工しているが量が少ないせいで製造コストがどうしても下げられないのだろう。

「わかりました。お父様には伝えておきます」

「ありがとうございます」

店主は笑顔でお礼を言ってくる。

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