第104話
マーカスからの返事はすぐにやってきた。
アルを責任者とする形なら交易艦隊を認めるとのことだ。
追加の人員も送られてきており次の交易からはより大規模な艦隊を組むことになるだろう。
「アル・・・。お願いがあるんだけど」
「フラン。どうしたの?」
「私も交易に行ってみたい」
「交易に?」
「ダメかしら?」
1回交易に出れば長期で離ればなれになることになる。
戦闘になり危険なこともあるが艦隊が増強された今なら今までより安全だろう。
「僕の指示に従ってくれるならいいよ」
「ありがとう」
フランは嬉しそうにアルに抱きついてくる。
色々当たっているが今のフランに何を言っても無駄だろう。
甘んじてこの状況を受け入れた。
ジェフリーに連絡を取るとすぐに行きますとの返事が返ってきた。
船の数が増えることも知らせておいたので商人として優秀な彼なら商品の準備もしっかりとしてくれることだろう。
アルとフランが港町であるスーウェンに到着すると商品の積み込み作業をしているところだった。
「これはこれはアルフレッド様」
「ジェフリーさん。これだけの商品よく用意できましたね」
「他の商会にも声をかけましてなんとか用意することができました」
「無理をしたのでは?」
「いえいえ。これぐらい無理の範疇に入りませんよ。ところでそちらのご婦人は?」
「紹介しますね。妻のフランソワです」
「フランソワです」
「アヴェント商会のジェフリーと申します」
「今回の交易に同行するのでよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
「ところで船の数がたりないようですが?」
「あぁ・・・。今用意します」
アルは追加の船をアイテムボックスから取り出す。
「アルフレッド様はアイテムボックス持ちだったのですね」
「隠してはいませんが内密にお願いしますね」
「顧客の秘密は守りますがもったいないですね」
「もったいない?」
「容量にもよりますがその能力があれば商品を大量に運べますから」
「あぁ・・・。なるほど。でも騒ぎになりませんか?」
「間違いなくなりますね。特に我々のような商人には・・・」
アイテムボックス持ちはまったくいないわけではないがそれでも貴重な存在だ。
商人達が知れば血眼で確保しようと動くぐらいなのだ。
アルとしては平穏な日常を望んでいる。
無用な騒ぎには巻き込まれたくなかった。
交易品の積み込み作業も無事終わりアル達は港を出向した。
海も穏やかで絶好の航海日よりだ。
戦闘が起こることもなく航海は順調に進んでいる。
前回、襲われた海域に入るがこちらの姿を見ると周囲の船は避けるように進路を変える。
「流石に学習したようですね」
「そのようです。ここが山場だと思っていたので問題が起きないならいいことです」
今回の交易も無事に終えることができそうだ。
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