第77話

3人が驚いたのは街の規模だったようだ。

小国とはいえマルコシアス王国の王都である。

大陸にある国々の王都と比べれば小さいがそれでもメール大陸にある街より大きくなるのは当然の結果だった。

「それにしてもここはアルの家なんだろ?こんなに大きい必要があるのか?」

「この地域を治める王族の住まいですからね。威厳を保つ為に必要なんですよ」

「威厳?」

「城を維持するためにはお金がかかります。ですが、それを維持できるだけの力を見せつける必要があるんです。国民はそれで安心しますし、他国に馬鹿にされないようにする意味もあります」

「なかなか複雑なんだな」

彼等は街で暮らしているとはいえ王族に支配されているわけではない。

この辺を理解するのは難しいのかもしれない。

「それにしてもここの飯は美味いな」

「船上ではどうしても保存の効く食料だけでしたからね。他にも美味しい物があるので楽しんでください」

「親父達に食べさせてあげられないのが残念だな」

「食材を運ぶのは難しいですが交易を続けていればこちらに来る機会もあるのでは?」

今回は3人だけだがアルとしては他の人達が来ても問題ない。

「そうだな・・・。その為にももっとこの国のことが知りたい」

「わかりました。僕に答えられることなら」

3人は気になったことを次々に聞いてくる。

アルは話せる範囲で彼等の質問に答えていった。

夜も遅くなり今日はここまでとアルは部屋に引き上げてきた。

アルは寝るのではなくランプに火を灯すと途中であった報告書の作成に戻った。

報告書を書き上げアルは伸びをする。

かなり遅くまでかかってしまったがベッドに横になる。

横になるとあっという間に眠気がやってきた。




ちゅんちゅんと鳥の鳴く音で目が覚める。

夜更かしをしたため、まだ眠いが眠い目を擦って起き出すと着替えを済ませてマーカスの部屋を目指した。

「おはようございます」

「おはよう。なんだか眠そうだね」

「ちょっと夜更かしを・・・。これ報告書です」

「もっとゆっくりでよかったのに」

マーカスは報告書を受けとり軽く目を通す。

「色々収穫があったようだね」

「はい。こちらでは入手できないものも多かったです」

「これらの品を大陸に持っていけば財政的には黒字だね」

「そうですね。安定して交易をするために言語の習得が必須ですけど」

「予想できたいたことだ。毎回、アルに行ってもらうわけにはいかないからね」

次回の交易にはアルが参加するがそれ以降は他の人に任せる予定でいる。

船員達にはその為にも言語をしっかりと習得してもらう必要があった。

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