第59話

アルは1週間ほどゆっくりしてから、精力的に動いていた。

まず、目指すのは海賊に占領されたままの島を取り戻すこと。

ヒンメルン王国に滞在している間に新たに学校を卒業した人員を加えて戦力は十分だ。

占領されている島の特産はなんとココナッツだった。

ココナッツには色々利用価値がある。

食用になるのもそうだがココナッツオイルの材料になる。

髭の部分も加工すれば輸出品になるはずだ。

砂糖やラム酒で十分利益は出ているがそれでも交易品を確保するのは急務だった。

それを考えればこの島を解放するのは当然の判断だった。

「アルフレッド様。船影を確認しました」

「指示を出すまで待機。全船に通達」

「通達します」

ここで慌てて攻撃をするわけにはいかない。

海賊なのか島民なのか確認する必要がある。

「相手の船。接近してきます」

「海賊旗は確認できるか?」

「確認中。確認できず・・・。いえ、今、海賊旗が上がりました」

「距離をとりつつ砲撃用意。まずは牽制砲撃だ」

「アイサー。砲撃準備」

船員は慣れた手付きで砲撃の準備をする。

「砲撃準備よし。いつでもいけます」

「よし。砲撃開始。海賊を駆逐せよ」

アルの号令によりアームストロング砲が火を吹く。

狙いは正確で海賊船の至近距離に水柱が上がる。

「海賊船。なお、接近中」

「手旗信号送れ。停船しない場合は撃沈する」

「海賊船停止しました。降伏旗上がりました」

「小型艦を送り海賊の拘束にかかれ」

「アイサー。小型艦に指示を送ります」

それから海賊の捕縛はすぐに済んだ。

同時に聞き取り調査の結果も届く。

彼らは、食うに困った島民であることがわかった。

たまに訪れる商船を襲って必要な物を確保していたようだ。

仕方ない行動ではあるものの犯罪行為に手を染めていたのは事実である。

無罪放免というわけにもいかない。

彼等には後程、罰を与える必要があるだろう。

とにかく、アル達はボートに乗り換え島に上陸した。

上陸したアル達を迎える島民達の視線は歓迎するものではなかった。

マルコシアス王国の領土でありながら放置されてきたのだ。

王家に対する恨みもあるのだろう。

アルはこの島の責任者である村長と対峙する。

「マルコシアス王国第一王子、アルフレッド・ド・マルコシアスです」

「儂はこの村をまとめているリシェットじゃ。用件はなんじゃ?」

「王家に恨みがあるのはわかります。ですが、再びこの地を治めることを許していただきたい」

「勝手にすればええ。儂らには逆らう力などない。都合が悪くなればまた見捨てるのじゃろ?」

彼等は長いこと放置されたことにより王家を信じられない状況なのだろう。

一度失った信頼を取り戻すのは大変だが真摯に付き合っていくしかないだろう。

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