第108話

「いやぁ。スンからこれだけの商品を運んでいただけるとは・・・」

そう言うのはジュエリー商会のマンハッタンだ。

スンからの交易品の多くは陸路から入ってくる。

それでは運べる量に限界があるし宿泊費などが加算されどうしても儲けが少なくなる。

今回は海路で運んだことにより移動時間の短縮に大量の商品を一度に運ぶことができた。

「こちらとしても悪い話ではなかったですからね」

アルとしてもかなりの額の報酬を受け取っている。

それに上陸はできなかったが見たことのない建築様式の街を見ることができた。

今後も付き合えばスンの街を探索することもできるだろう。

それらを考えれば今回の取引は悪くなかった。

そんなことを考えている間も船員達はジェフリーとマンハッタンの指示で積んできた積み荷をてきぱきと運び出していた。

半日で積み荷を積み替えたアル達一行は港町サンソンを後にする。

東の大国であるスンまで行っていたので予定を大幅に超えている。

船員達には悪いができるだけ早く帰国する必要があるだろう。

余力を残しつつも風魔法を併用しできる限り最速でヒンメルン王国を目指した。




風魔法を常時使うような状態で航海の日程を大幅に短縮しヒンメルン王国の港街であるスーウェンに到着した。

「アルフレッド様。お待ちしておりました」

そう言って出迎えてくれるのはこの街を治めるトーマス伯爵である。

「トーマス伯爵、自ら出迎えてくれるとは何かありましたか?」

「いえ。予定よりご帰還が遅れているので陛下からせっつかれましてな」

「なるほど・・・。別件でスンまで行っていたものですから・・・」

「スンですか・・・。それはまたずいぶん遠くまで行っていたのですな」

「えぇ。おかげで収穫は十分ありましたよ」

「それはよかった。陛下に話したら喜ばれることでしょう」

こうして話している間も船員達はてきぱきと動いている。

積み荷が全て降ろされたのを確認してアルとフランは港街であるスーウェンを後にした。

王都に向かう馬車での道中フランがお礼を言ってくる。

「今回は私の我儘を聞いていただきありがとうございます」

「いえ。ほとんど船室に閉じ込めるような形になってしまいすみません」

「アルが暇つぶし用に本を大量に用意してくれたので退屈しませんでしたよ?」

アルも船の上では基本的にはすることがないので本の翻訳作業をしていることも多い。

今回はその翻訳した本をフランに提供した形である。

嫌な思いをさせていないか心配だったが杞憂だったようだ。

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