第64話

アルは大型の戦闘艦に乗り艦隊を率いてソラニアの艦隊と共に海賊被害の大きい海域に入った。

普通ならこれだけの規模の艦隊なら襲われない。

だが、大きな獲物と思われたのか近づいてくる船があっという間に増えていく。

驚いたことに相手には大型の戦闘艦まで混じっている。

数も今のところこちらの2倍ぐらいいる。

これでは普通の戦力では勝負にならないだろう。

「ソラニアの艦隊に通達。これより我が艦隊は前に出て戦闘行動に移る」

「通達します」

風魔法を帆に当てて増速する。

1隻でも多く海賊を撃沈するためにぎりぎりまで砲撃を我慢する。

十分引き付けた状態で一斉にアームストロング砲が火を吹く。

今回、アルが引き連れてきているのはマルコシアス王国でも精鋭の船乗りだ。

それぞれ別の海賊を狙い命中させている。

被害を免れた海賊船もいるが密集していたのが災いして逃げ出すこともできない。

アル達は巧みに船を操船して確実に海賊を撃沈していった。

海に投げ出される形となった海賊は戦闘終了後、マルコシアス王国艦隊とソラニア王国艦隊に救助された。




ソラニア王国の指揮官は唖然としていた。

マルコシアス王国の艦隊の実力は噂には聞いていた。

だが、実際に目にするとその異常な戦闘能力を実感する。

これが敵だったなら・・・。

間違いなく自分達は勝てないだろう。

自分達は自国の船を全て守ることはできないが資源大国としてそれなりの戦力を保有しているはずだった。

だが、蓋を開けてみれば増え続ける海賊に無力だった。

自国で解決できないなら他国を利用すればいい。

有力貴族が発言しそれが実行されたのだ。

目をつけたのはヒンメルン王国だった。

諜報の結果、ヒンメルン王国はサーキス王国と仲が悪いとわかっていたからだ。

海軍の力は強くない。

だが、同盟国に強力な海軍を持つマルコシアス王国がいるのも大きかった。

マルコシアス王国は大陸から西に向かったところにある島国であり主に取引をしているのはヒンメルン王国だけである。

ヒンメルン王国を通して入ってくるマルコシアス王国の交易品はソラニア王国としても重要なものだった。

甘味は貴重であったしココナッツオイルも光源の燃料として大いに役立っている。

ココナッツの髭を固めたファイバーは農作物育てる際に十分利用できるとの報告を受けていた。

資源を融通して直接取引ができればソラニア王国としても国益に利するのである。

散々交易の邪魔をしてきた海賊への意趣返しもあるがメインの目的はヒンメルン王国とマルコシアス王国との接点を作ることであった。

海賊退治を主導することで周辺国に存在感を見せつける。

これも目的の1つだった。

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