第73話

突然の嵐であるが船員達は冷静に動きなんとかやり過ごすことが出来た。

現在は全ての船が停船している。

「さて・・・。現在地を確認しないと・・・」

今現在は先程の嵐が嘘のように晴れ渡っている。

頭上には月と満天の星が広がっていた。

星を読み現在地を割り出す。

予定より南に流されたようだがこれぐらいならカバーできる範囲だ。

ランプで合図を送りそれぞれ進路を戻しアル達一行は航海を再開した。

多少のトラブルはあったが航海すること2ヶ月。

見張り台から歓声が上がる。

「大陸が見えたぞぉぉぉ」

その知らせは船内をかけまわり一同を安心させた。

「本当に大陸があるとは・・・」

「安心するにはまだ早いですよ」

本当に大変なのはここからだ。

停泊できそうな場所を探すことからはじまり、上陸できたとしても相手が友好的に接してくれるとは限らない。

結局、停泊できそうな場所を探すのに1週間ほどかかった。

選んだのは小型の船が散見される小さな港町だった。

大型の船舶では上陸できないので積み込んでいたボートを降ろし選抜された少数での上陸だ。

こちらのことを認識しているのだろう。

港町には人がどんどん集まってきている。

上陸したアル達に対し原住民は威圧的に接してくる。

「お前達は一体何なんだ」

「僕達はマルコシアス王国からやってきました」

「マルコシアス王国?聞いたことのない名だな」

「ここからずっと東に行ったところにある国です」

「東に?そんなところに国なんてなかったはずだが?」

「我々は貴女方との友好的な関係を望んでいます」

「そうか。我々としても貴女方を歓迎しよう」

「ありがとうございます。受け入れてくれた感謝を表して1席設けたいと思うのですが・・・」

「そうだな。新たな出会いに感謝してこちらも相応のもてなしをしよう」

アルは着いてきていた船員に食料と酒を持ってくるように指示をだす。

集まっていた原住民の人達も一度解散してそれぞれに宴の準備をしてくれた。

酒が進みお互いにコミュニケーションはとれないが楽しそうにしている姿を見れば狙いは成功といえるだろう。

アルはお酒は飲めないがその分、情報収集に徹していた。

どうやらこの大陸はメール大陸という名で呼ばれているようだ。

大きな国はなくいくつかの集落にわかれているとのこと。

貨幣がなく物々交換でやり取りをしているようだ。

そして、山の方に彼等が崇める神の聖地があるとのことだった。

聖地を納める者達は気難しく外との交流に否定的だという。

宗教とは扱いを間違えれば大変なことになる。

接触してきた際には慎重に対応する必要があるだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る