第72話
アルは父であるマーカスからの手紙を受けとり、ヒンメルン王国にフランを残してマルコシアス王国へと戻ってきていた。
「呼び出してすまないな」
「いえ。適任者を考えれば僕でしょうから」
今回、呼び戻されたのは船を提供するのが1つ。
そして、重要なのがマルコシアス王国から西へ探索に出る艦隊への同行だった。
東の状況はわかっているがマルコシアス王国から西は何がどこにあるのかわかっていない。
アルの予想では未発見の大陸があると思っている。
文明のレベルにもよるが東進してきた未知の文明に襲われる可能性もあるわけだ。
それを考えればこちらから接触を図り安全を確保するというのは重要な案件といえる。
接触して終わりということではない。
今後のことを考えれば平和的な関係が望まれる。
言葉が通じればよいのだが、必ずしも同じ言語を操るとは限らない。
そこで、目をつけられたのがアルの言語理解だった。
アルならば未知の言語でも対応できる。
「それでは行ってきます」
「無事の帰還を願っておるよ」
アルは艦隊を率いてマルコシアス王国を出発した。
今回、率いている船は大型の戦闘艦が5隻。
大型の輸送艦が3隻である。
どれぐらいの期間がかかるかわからないため、それぞれに食料を満載している。
水に関しては水魔法を活用して確保する手はずとなっている。
「アルフレッド様。本当に大陸があると思っているのですか?」
話しかけてきたのは旗艦となっている大型戦闘艦の船長だ。
「可能性は多いにあると思っています」
「そうですか・・・」
「やはり不安ですか?」
「不安ですね。仮にです。何もなければ我々は食料の補充もできず海を彷徨うことになる」
「一応、食料が3分の1になったら引き返す予定ですけどね」
「そうでしたね。とはいえ、ここまでの遠距離移動ははじめてです。船員達も不安に思っていることでしょう」
「普段通りにやれば大丈夫ですよ」
「そうは言われても・・・」
アルは船長が喋るのを遮る。
「風が出てきましたね」
「本当ですね。これは嵐になるかもしれません」
先程までの不安そうな顔が引っ込み真剣な顔になる。
「すぐに警戒を」
「わかりました。指示を出してきます」
船長の指示が行き渡ると船内は騒がしくなっていった。
軽い嵐であればいいが大きな嵐の場合はぐれる可能性もある。
はぐれた場合、合流するのは難しくなる。
そうならないように祈ることしかできなかった。
だが、残念ながらその祈りは届かなかったようだ。
波は荒れ強風と土砂降りの雨が船団を襲った。
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