第133話
アルは押し付けられた領地の状況を見て溜め息をついていた。
問題となるのは食料だ。
現在は他国から買い付けて運び込んでいるがそれも長くは続かない。
早急に解決しなければ民が飢えることになる。
農業関係についてはフランに丸投げだ。
アルが担当するのは家畜や漁に関してだ。
不足していた漁船については早々に在庫のある船を提供した。
家畜に関しては増えるのを待つわけにもいかず他国から輸送する手はずを整えた。
ジェイクとマーカスから押し付ける代わりにと資金は提供されたがそれを頼りにするわけにもいかない。
外貨を稼ぐ方法としては特産品の輸出などだが元サーキス王国には売れそうな物がほとんどなかった。
これは植民地から財を巻き上げていた弊害だろう。
ルフェスから植民地の支配権も譲られたが現地の貴族が反発している。
協力してくれるどころか違法に占拠したサーキス王国を解放しろとまで言ってくる始末だ。
アルとしては植民地から財を巻き上げるつもりはないが取引できないのは痛手だ。
とはいえ、交渉を続ける余裕もない。
植民地に関してはしばらく放置して内政に励むしかないだろう。
後は防衛に関してだ。
サーキス王国は海上国家だが先の戦争でほとんどの船が沈んだことにより戦力が足りていない。
ゲリラだった人達を中心に教育しているが戦力としてカウントできるようになるまでしばらく時間がかかるだろう。
だが、一番の問題は積み上げられる書類の山だろうか。
ジェイクもマーカスも補佐官を出してくれ、これでも書類の量は減っている。
1国の王とはこれほどまでに忙しいのかと頭の下がる思いだ。
そんなことを考えて現実逃避をしていると補佐官が入室して書類の山を置いていく。
見ていても仕事の量が減るわけではない。
諦めてアルは書類に手を伸ばす。
黙々と書類の山との格闘を続けた。
「アル。大丈夫?」
「フラン・・・。ちょっと挫けそう」
「外回りは終わったから手伝うわ」
「ありがとう」
2人がかりで書類をひたすらに処理していく。
フランの手伝いもあり書類の山は少しずつ減っていった。
夕食前までにはなんとか終えることができた。
「ふぅ・・・。これが毎日だと嫌になるね」
「そうね・・・。でも、今は混乱してるし統治者が不在の地域も多いから・・・」
「あぁ・・・。なるほど。それでこっちに書類がまわってきてるのか」
「お父様達には人手を寄越してほしいと伝えているからそれまでの辛抱ね」
「こっちでも適正のありそうな人を早急に見つけないと・・・」
アルは少しでも楽ができるように書類仕事のできそうな人材を頭に思い浮かべた。
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