第134話

書類仕事が出来そうなメンバーとして艦隊から人を引き抜いてきた。

流石に指揮官クラスを引き抜くのは無理だったがそれでも士官クラスならある程度、書類仕事ができるだろう。

というのも彼等は日々、航海記録をつけているのだ。

引き抜いた際に嫌そうな顔をされたが我慢してもらいたい。

「書類仕事って言われてもなぁ・・・」

「大丈夫です。わからないところは教えますから」

最初の頃は頻繁に質問されたが、仕事に慣れてくるとその頻度も減っていった。

そのおかげもあり視察に出る余裕もできた。

住民達から意見を直接聞き、不足している物や欲しい物などを聞く。

一時的に取引を止めていた各国であるがアルが統治するようになってから各国の商船も戻ってきており少しずつではあるが民の生活は安定してきている。

豊かになれば弊害もある。

山賊や盗賊などの賊が集まってきていた。

兵士を見回りに出したりと対策はしているが実際に取り締まれている数は少ない。

被害報告を聞くともっといるはずだが、兵士が巡回しているときは山や森に潜んでいるようだ。

山や森に踏みいって捕縛を行えればよいが現状の兵力ではそれが難しい。

街道の見回りをするだけでも兵士達に無理をさせている。

幸いなことに持ち物を差し出せば命を取るような輩が少ないことだろうか。

賊の方も人死にを出せばこちらが本腰をいれて捕縛に走ることを理解しているのだろう。

いずれはどうにかしないといけないことだが人手が足りない現状で打てる手はほとんどない。

打てる手の1つとして各地区に自警団を結成させた。

かかる費用を全て負担するのは難しいが補助を出している。

「はぁ・・・。お金がないのにお金が消えていく・・・」

「そうですね・・・」

アルとフランは帳簿を見て溜め息をつく。

民の生活を何とかしようと奔走した結果、渡された資金が底を尽きそうだった。

今まで稼いだ個人的な資産はあるが国の経営としては失格だろう。

「ないなら作り出すしかない・・・」

「でもどうするの?」

「危険はあるけど防衛に当ててる艦隊に交易してもらおうかな」

他国から攻められる可能性はないだろうがそれでも海賊といった驚異はある。

治安が低下する可能性があるがそれでも資金を確保する必要があった。

アルは信頼できる人員を選抜して交易に送り出した。

場当たり的な対応になってしまうが元サーキス王国に住まう人々の為にできることをしなければならなかった。

王族に生まれた以上は仕方ないがそれでも海が恋しくなってくる。

少しでも早く安定させてまた航海に出たいものだ。

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