第132話

サーキス王国の国王であるルフェスは王城から街を眺めていた。

港はマルコシアス王国の艦隊に封鎖され陸上からはヒンメルン王国の軍勢が迫っている。

「もはや、ここまでか・・・」

抵抗したところで止められないことは前回のことでわかっている。

「誰か」

「はっ」

「降伏旗をかかげよ。これ以上の犠牲は不要である」

「わかりました・・・」

声に答えた兵士は不満そうな顔をしている。

自分達の実力が足りないばかりに下の者達には不便をかける。

ルフェスは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

しばらくしてヒンメルン王国の国王であるジェイクが乗り込んできた。

「このような形になって残念だ」

「そう思うのなら介入しないでほしかったな」

「そうも言ってられん。本格的に統治機能が麻痺してから介入しては我が国としても困ったことになるからな」

「それもそうだな・・・。最後に我が儘を言ってもいいだろうか?」

「何だ?」

「今回の責は私にある。この老骨の首1つで勘弁してもらいたい」

「お前の首をもらったところでだな・・・」

「だが、我が国に差し出せる物など他にないぞ」

「これ以上、血を流す必要などないさ。お前には修道院にでも入ってもらう」

サーキス王国は没落したがそれでも複数の植民地を支配していた国だ。

下手な扱いをすればどんな反応が返ってくるかわからない。

それを考えれば生きていてもらった方が都合がいいのだ。

少し遅れてマーカスも顔を出す。

「これからどうする?」

「それが問題だ」

マルコシアス王国もヒンメルン王国も元々持っていた領地の運営だけで手一杯だ。

だが、占領した者の責任としてサーキス王国を放置するわけにもいかない。

「私に妙案があるのだがな・・・」

「ほう?聞かせてもらおう」

「アルフレッドにこの地を押し付ける」

「それは・・・。いや、確かにそれは良い手だな」

経験不足で不安な面もあるがそれは補佐をつければいいだけだ。

下手に分配で揉めるよりもアルに押し付けてしまえば被害も最小限で済むだろう。

騒ぐ貴族もいるだろうがマルコシアス王国の王族でありヒンメルン王国の王族であったフランを妻に持つアルが統治するなら表だって反対はできない。

「決定だな」

アルの知らないところで領地を押し付けられることが決定した。

民としては上が変わろうと自分達の生活が豊かになればなれば納得するものである。

アルは押し付けられた領地の運営で忙しく動きまわることになるがこれもいい経験であろう。

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