第62話
ヒンメルン王国は陸軍国家であり海軍を軽視してきた。
だが、度重なる海賊被害に重い腰を上げることになった。
海軍の新設を決意し講師として同盟国であるマルコシアス王国の退役軍人を招いて海軍学校を新たに立ち上げる。
それに合わせて、制限はあるものの多くの船がアルから提供された。
提供された船は漁船に中型の輸送艦。
そして、小型の戦闘艦である。
提供された全ての艦には自衛用として砲の数は少なくなるもののアームストロング砲が載せられている。
これで襲われても被害を少なくすることができるだろう。
「アルフレッド殿。感謝する」
そう言って頭を下げているのはヒンメルン王国の国王であり義父のジェイクである。
「いえ。まだまだ恩を返し切れていないので・・・」
ヒンメルン王国はマルコシアス王国の為に様々な品を入手してくれていた。
それのおかげでマルコシアス王国の生活水準はかなり改善されていた。
「我が国もかなり稼がせてもらっているからな。これぐらいは当然だ」
マルコシアス王国が運んでくる砂糖にラム酒。
各種ココナッツ製品。
それらはヒンメルン王国の玄関口であるスーウェンに荷揚げされ大陸の各地に運ばれていく。
その交易を通してマルコシアス王国とヒンメルン王国は大きな富を手に入れていた。
だが、問題がないわけではない。
両国に富が集中しているのを面白く思っていない勢力も存在する。
だが、元々ヒンメルン王国は強国であるし、弱点であった海軍もマルコシアス王国がカバーしている。
その2大勢力に面と向かって文句を言う度胸はなかった。
それにこの地域の国々は正規の取引をしてくれている両国に文句を言っている場合ではなかったのである。
サーキス王国の私掠免許状を与えられた破落戸(ごろつき)達の被害が深刻だったのだ。
調子に乗った彼等は他国の支配海域にも出没し商船を襲い始めたのである。
サーキス王国に抗議するものの我らは知らぬと言われる始末。
商船を守る為に戦力を配置する必要のある各国は他のことにかまけている余裕がなかった。
海から運ばれてくる品に大きく依存している国家が多く、入手できなければ民から不満の声が漏れる。
各国は戦力を拡充しようにも船は1日でできるわけではない。
長い時間をかけて建造しても1回の戦闘で失うこともある。
そんな理由もあり中々戦力を整えるのが難しい状況なのである。
そんな中、ヒンメルン王国とマルコシアス王国に接触しようとする1つの国があった。
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