第56話
婚姻の根回しが行われている間もアルのマナー講座とダンスのレッスンは続いていた。
子供の頭というのは柔らかい物でなれないことでも湯水のように吸収する。
アルはそのことを感謝しつつ日々を過ごしていた。
そして、わずかに与えられた休憩時間にジェイクからある相談を受けていた。
「忙しいのにすまないな」
「いえ。それで折り入ってご相談があると?」
「そうなんだ。マーカス殿に頼んだらアルフレッド殿の管轄だといわれてな」
アルは嫌な予感を覚えるが一応聞いてみる。
「なんでも言ってみてください」
「ふむ。マルコシアス王国の船に載っている砲を研究開発したい。譲ってはもらえないだろうか?」
「あぁ・・・。ちなみに船の確保の方法は聞きました?」
「いや。詳しくは聞いていないがアルフレッド殿が管理しているとだけ」
「僕は、船を1日1隻だけスキルで産み出せるんです。先程の答えですが小型の戦闘艦ならお譲りできます」
「正直、驚きのスキルだな。マルコシアス王国が急に力をつけたと思ったらそんなからくりだったとは・・・。だが、なぜ船ごとなんだ?」
「それはですね・・・。過去にうちの国でも研究開発のために船から降ろそうとしたことがあるんです。ですが、無理でした」
「それで船ごとというわけか」
「そういうことです」
「後で空き地に案内するのでそこに出してもらってもいいだろうか?」
「構いませんよ」
「感謝する」
「ただ、開発は難しいでしょうね」
船から降ろせないから研究、開発を諦めたというわけではない。
マルコシアス王国では現在も船上で研究、開発を続けている。
だが、再現するためには技術が圧倒的に足りていないのだ。
これは、魔法が存在することによる科学技術の未発達から来る問題だ。
もし、自力で砲を開発することを考えるなら長期的な目線での計画が必要だろう。
「うちでも研究、開発はさせているので後でその結果を取り寄せるように手紙を書いておきますね」
「そうしてくれると助かるが何か望むことは?」
「うちは資材がとにかく乏しいですからね。開発資材の調達に協力していただけると・・・」
「うむ。喜んで協力させてもらおう」
どちらが開発に成功しても問題ない。
研究結果の全てを共有は難しいかもしれないがそれでも両国の利益になることは間違いない。
現在は剣も魔法も最終的には個人の資質による部分が大きい。
砲であれ銃であれ開発することができれば大きく飛躍することができるだろう。
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