第55話

朝食も済み食後のお茶の時間にセリュスが爆弾発言をしてきた。

「昨夜はお楽しみだったわね?」

「お、お母様・・・?いったい何のことですか?」

フランとアルは意識していただけに視線を泳がす。

「何って・・・。昨夜はアルフレッド殿の部屋にいたのでしょう?」

「ぐっ・・・。確かにその通りですが何もありませんでした」

「それは知っているわ。でも、何もなくても一晩共の過ごしたのは事実。これが広まったらどうするつもりだったのかしら?」

「初耳なんだが?」

ジェイクはそう言って驚いている。

「私が口止めをしましたからね。マーカス陛下。嫁入りの前の娘がお宅の子と過ごした。責任はとってくれるのでしょうね?」

「はぁ・・・。アルフレッドよ。お前はどうなんだ?」

「どうって・・・。フランソワ様は素敵な方だと思います。僕以上に相応しい相手がいるのでは?」

「嫌なわけではないのだな?」

マーカスは確認するようにじっと見つめてくる。

「嫌なんてそんなこと・・・」

「ジェイク殿。フランソワ嬢が構わぬなら婚姻を結ぶということでいいだろうか?」

「ふむ。冗談で言っただけだったのだがな。フランソワ。お主次第だ」

「アルフレッド様。私は歳上です。それでも構わないのですか?」

「えぇ。年齢は関係ありません。一緒にいて心安らぐフランソワ様なら大歓迎です」

「わかりました。お父様。この話し受けたいと思います」

「そうか。2人に異論がないならいい。アルフレッド殿。娘をよろしく頼む」

「はい。認めていただきありがとうございます」

「とは言えだ。急に決まったことだからな、発表は少し待ってほしい」

「それは構いませんが・・・」

「セリュス。全力で外堀を埋めるぞ?」

「あら。私はもう動いていますわよ?」

「そうか・・・」

よく見ればメイド長がいない。

ヒンメルン王家のメイド長はセリュスが嫁いで来た際に実家からついてきた信頼のできる人物だ。

普段ならセリュスから離れることがないというのに娘のために色々動いているのだろう。

ジェイクは控えていた使用人を呼び寄せるといくつかの指示を出す。

騎士達は先日の件でアルのことを認めているがこの婚姻を進めるために何人かの重臣には説明が必要だろう。

とくに、フランとの婚姻で玉座を狙っていた者も少なくない。

横やりをいれられる前にしっかりと地盤を固める必要がある。

これから忙しくなるだろうが幸せそうな顔をしているフランとアルを見ればそんな労力は関係ないと思えた。

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