第33話

「お父様。わざわざ出迎えにきてくれたのですか?」

「うむ。お客人がいるのなら誠意を見せようと思ってな」

「ご紹介いたします。ヒンメルン王国第一王女フランソワ・ド・ヒンメルン様です」

「お初めにかかります。ヒンメルン王国第一王女。フランソワ・ド・ヒンメルンと申します」

「ヒンメルン王国で伯爵の位をいただいているトーマス・フォン・スーフェンと申します」

「お二方、よくこられた。マルコシアス王国国王。マーカス・ド・マルコシアスだ。我が国はお二方を歓迎しよう」

「痛み入ります」

「ここではなんだな。移動しよう」

マーカスの提案で待機していた馬車に乗りこむ。

アルはマーカスと同じ馬車に乗っており謝罪する。

「お父様。勝手に軍事同盟を結び申し訳ありませんでした」

「いや。どこかしらの国と親密な関係を結ぶことは必要なことだった。相手も王族を送り込んできたところをみると本気なのだろう」

「ヒンメルン王国の王様ともお会いしましたがとても良い方でした」

「そうか・・・。ならばすることは1つだ。相手の期待を裏切らぬように全力で取り組もう」

「はい」




「トーマス伯爵」

「はい。なんでしょうか?」

「この国はとてもいい国のようですね」

「そうですな・・・。国民が皆、生き生きとしております」

「それだけではありません。私達が乗ってきた船以外にも大型の船舶が停泊していました」

「あのクラスの船を複数所持しているところを見ると軍事力も期待できそうですね」

「アルフレッド様はあのお歳なのに凄い方です」

フランは心の底からそう思った。

普通ならまだまだ政治には関わらず遊びたい盛りの頃だろう。

だというのに、他国にまで随伴し国のために働いている。

父であるジェイクとの交渉も見事な手腕だった。

相手の望みを見抜き自分の要求を通す。

単純なことだがこれがまた難しいのだ。

それをわずか7歳で成し遂げたアルが国王となるならマルコシアス王国は益々発展するだろう。

「フランソワ様はアルフレッド様にご興味がありますか?」

「なんです。急に?」

「陛下は冗談のようにいいましたが、フランソワ様が本気になれば婚姻も可能でしょう」

「そうですね・・・。能力は疑う余地はありません。それに見た目も・・・」

「見た目も?」

「とっても可愛らしくてなでなでしてみたいわ」

「なでなでですか?」

「ええ。ぎゅっと抱き締めてお持ち帰りしたい」

どうやらアルはフランの母性本能をくすぐる存在のようだ。

婚約とは違う愛情表現であるが好ましく思っているのは間違いない。

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