第32話

サーキス王国の海上大臣は玉座の間に呼び出されていた。

「色々、勝手に動いているようだな?」

「陛下のお手を煩わせるようなことでは・・・」

「まぁ、そう言うな。相手はマルコシアス王国とのことだったな」

「その通りでございます」

「忌々しいが当面は放置せよ」

「放置ですか?」

「前にとある商会から陳情があがってきていたが、対応するだけの戦力をさく余裕がない。お主もわかっているだろう?今、植民地に少しでも甘い顔をすれば多くの利権が失われることを」

「わかっております。ですが、ここで何もしなければ周辺国が我が国にどんな態度をとるか・・・」

「それは仕方ないだろう。だが、必ず報いは受けさせる。今は、少しでも戦力増強に励むのだ」

「かしこまりました」




自分の執務室に戻ってきた海上大臣は荒れていた。

机を投げ飛ばし椅子を破壊し部屋の中で暴れまわる。

その音を聞き付けたのだろう補佐官が部屋に入ってくる。

「閣下・・・」

「忌々しいマルコシアス王国め。必ずこの報いは受けさせてやる」

「報告をしてもよろしいでしょうか?」

「何だ?」

「聞き取り調査の結果、相手は未知の兵器を使うとのことです。魔法では射程が届かず一方的に攻撃を受けるとのことです」

「それだけか・・・?」

「申し訳ありません。現在は情報はこれだけです。対抗策を何か考えなければ一方的に被害を受けるだけかと」

「当面は手だしできぬ。引き続き情報を集めろ」

「かしこまりました」

補佐官は巻き込まれては堪らぬと報告だけして早々に部屋を出ていった。

「何か対策を立てねばどうすることもできぬか・・・」

遠距離から一方的に攻撃されるとのことだが、いくつか策を考える。

機動力を強化して魔法の射程に持ち込むか?

だが、船というのはどうしても速度に制限がかかるものだ。

機動力を重視すれば耐久力にも問題が出るだろう。

ならば、相手の攻撃を耐えきればなんとかなるだろうか?

装甲を厚くすればその分、船の足は遅くなる。

どちらの策もとにかく試してみるしかないだろう。

ベルを鳴らし、補佐官を呼び出す。

「なにか?」

「至急船の研究をしたい。関係者を呼び出して協議せよ」

詳細を話、補佐官に指示を出す。

「わかりました・・・。予算は厳しいですができる限りのことをいたします」

「頼んだぞ」

「はい」

「ついでにこの部屋の片付けも頼んだ」

「わかりました・・・」

補佐官は関係者に通達を出したり部屋を片付ける手配をしたりと精力的に仕事をこなした。

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