第31話
「我が国の船が沈められただと?」
そう報告を受けたのはサーキス王国の海軍大臣である。
「はい。ヒンメルン王国への定期商船がスーフェンの港で見たこもない船に襲われたと」
「なんということだ・・・。このままでは我が海軍の威信が落ちてしまう。ただちにヒンメルン王国に情報提供を求めろ」
これは海上を支配するサーキス王国への挑戦だ。
海上大臣はそのように受け取った。
だが、耳を疑うような報告が入ってくる。
ヒンメルン王国から抗議文が届いたのである。
ヒンメルン王国の言うことを信じるならこうだ。
サーキス王国の船が停泊中の他国の船に襲いかかりやむを得ず反撃し撃沈するにいたった。
我が国はこれを行ったサーキス王国に対し正式な謝罪を要求する。
「これはまずいことになった・・・」
ヒンメルン王国は海上戦力は劣っているが強力な陸上戦力を持っている。
「このまま手をこまねいているわけにはいかない。動かせる戦力を投入して海上から圧をかけろ」
「今すぐ動かせるのは中型の戦闘艦が1隻。小型の戦闘艦が10隻です」
「ヒンメルン王国相手にならそれで十分だ」
「ただちに派遣します」
海軍大臣の命令で派遣されたサーキス王国の艦隊はマルコシアス王国の派遣艦隊と対峙していた。
「我々はサーキス王国の艦隊である。所属を名乗れ」
「我々はマルコシアス王国の派遣艦隊である。ヒンメルン王国との盟約に基づきこの海域を守護するものである」
「マルコシアス王国だと?弱小国家ごときが我々の行く手を阻むなど笑止。ただちに航路を譲れ」
「警告である。このまま進路を変更しない場合、我々は貴艦隊に対し攻撃をする用意がある」
どちらも引く気はない。
ならば後はぶつかりあうだけだ。
マルコシアス王国の艦隊はかなり距離をあけて並走してくる。
魔法で攻撃しようにもあの距離では攻撃が届かないだろう。
だが、この考えが間違っていたことを認識させられた。
よくわからない物で攻撃をされたのだ。
船のすぐ近くから水しぶきがあがる。
「これは警告である。進路を変更しない場合、次は船にあてる」
「ぐぬぬ。一方的に攻撃をされては船を無駄に失うだけだ。ここは撤退するぞ」
「しかし・・・」
「いいたいことはわかる。だが、このままでは勝負にならないだろう。責任は私がとる」
「わかりました・・・」
サーキス王国としても船は貴重品だ。
無駄に失うわけにはいかなかった。
サーキス王国の指揮官のこの判断は英断と言えるだろう。
だが、面子を潰された海上大臣の怒りを向けられ指揮官は罷免された。
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