第30話
「さて。アルフレッド殿。1つ頼みがある」
「何でしょうか?」
「トーマス伯爵とフランソワを貴国に一度連れていってはもらえまいか?」
「トーマス伯爵はわかりますけどフランソワ様をですか?」
「うむ。どう転ぶかはまだわからぬが結婚する相手の国を一度、目で見てみるというのも必要だろう」
残念ながらアルの連れてきている艦隊は男所帯だ。
年頃の娘さんを預かるというのは不安な面がある。
「我が国の艦隊は男所帯です。規律は正しいと思っていますが何が起こるかわかりませんよ?」
「何も起こらないことを祈っておるよ」
そう言ってジェイクは笑って見せる。
可愛い子に旅をさせよという言葉もある。
自分達の文化と違う国を見せることでフランの成長を願っているのだろう。
そして、同時にアルのことを試してもいる。
女性1人を守ることもできないのかと無言で言っているのだ。
「はぁ・・・。わかりました。必ず無事に連れて戻ってきます」
「頼んだぞ」
思わぬ形でヒンメルン王国の国主であるジェイクと会談を出来たのはよかったがアルにはしなければならないことがあった。
それは、本国に帰る艦とヒンメルン王国に残す艦を選ぶことだ。
定期的に派遣艦隊は入れ替えるつもりではいるが、国に帰れないのを嫌がる者もいるだろう。
アルは経験豊富な古強者と経験の浅い者をバランスよく配備した。
残る者達からせめて家族に渡してほしいと手紙を預かり、帰国の途についた。
最初はどうなることかと思ったフランとそのお付きの侍女達であったが、気分のいい日には日光浴を楽しんだりと船旅を楽しんでいた。
転生前は社会人ではあったが、悲しいことに独身貴族を貫いていたこともあり最初はどう接したらいいのかわからなかったが、会話を重ね普通に会話できるぐらいにはなった。
これは年下であるアルに対してフランが気を使ってくれていたのも大きいだろう。
この時代の船旅では食事のメニューはどうしても同じになりがちだ。
フラン達は文句を言わなかったがきっと不満を抱えていることだろう。
マルコシアス王国に着いたらまずは美味しい料理を食べてもらおうと心のメモに書き加えた。
フラン達を加えたアルの率いる艦隊は途中トラブルもなく無事にマルコシアス王国の王都に到着した。
先ぶれに小型の戦闘艦を先行させていたのでアル達が王都に着いた時、護衛を引き連れてマーカスが港で待機していた。
この反応を見ると軍事同盟も受け入れてくれるだろう。
ジェイクにはああいったが最終的に決めるのは国王であるマーカスの仕事だ。
アルは肩の荷が下りた思いだった。
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