第94話

アルが9歳の誕生日を向かえるとすぐにフランとの結婚式が行われた。

まずは、マルコシアス王国で結婚式をおこなう。

この結婚式にはヒンメルン王国からジェイクとセリュスも駆けつけて盛大に執り行われた。

国民達も総出で祝福してくれた。

お祭り騒ぎは1ヶ月ほど続くことになるがアル達はお披露目のパレードが終わると船に乗り込みヒンメルン王国を目指した。

ヒンメルン王国に到着するとトーマス伯爵が暖かく迎え入れてくれる。

そのまま王都に移動して古めかしい教会で結婚式が執り行われた。

この教会は代々の王族が結婚式をおこなってきた伝統ある教会である。

マルコシアス王国での結婚式は特に決まりなどなかったがヒンメルン王国の結婚式は儀式の一種であり行わなければならないことが多かった。

結婚式が終わる頃にはアルもフランもへとへとだ。

だが、これで終わりではなかった。

集まった貴族を招いての晩餐会が2人待っていた。

食事をする余裕もなく次々挨拶にやってくる貴族の相手をする。

座っているだけとはいえこれはこれで辛い。

一通りの貴族の挨拶をこなしアルとフランは会場を後にした。

部屋に戻ってきたアルとフランはどうにか用意された食事を食べ終えると倒れこむようにベッドに横になる。

そのまま2人は仲良く夢の中に旅立っていった。




アルとフランは揺すられる感覚で目を覚ます。

「お疲れのところ失礼いたします」

「おはようございます・・・?」

「朝食の準備ができております」

アルはぼーっとしている頭で今日の予定を思い出す。

今日の予定は国民への顔見せだったはずだ。

慌てて時間を確認する。

予定の時間まであまり余裕がなかった。

フランも時計を確認して慌て出す。

「もうこんな時間・・・」

アルとフランは急いで食事を食べるとそれぞれ使用人に手伝ってもらいながら準備を整える。

バルコニーに向かうとアルとフランの両親はもう待っていた。

「ずいぶんゆっくりしていたな?」

「思っていたより疲れていたみたいで」

「まぁ。その気持ちはわかるぞ。俺達もきつかったからな」

ジェイクは昔を思い出すような顔をしている。

「さぁさぁ。2人のお披露目よ。見せつけてきなさい」

そう言うのはセリュスだ。

「行ってきます」

アルとフランは揃ってバルコニー踏み出した。

広場には大勢の人が詰めかけている。

アルとフランは笑顔で手を振りアピールする。

自分達は大勢の人達に祝福されている。

それを考えるととても誇らしい気持ちになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る