第95話

アルとフランは結婚式を行った日から部屋を共にしていた。

とはいえ何かがあるわけではない。

アルは暇を見つけては本の翻訳作業をしていたしフランはそんなアルをお茶を飲みながら見ていた。

たまに街にお忍びでデートに行ったりはしていたがそれは今までも行っていたことだ。

だが、2人共焦ってはいない。

自分達には自分達のペースがある。

ゆっくり関係を深めていけばいいのだ。

「アル。幸せですね」

「そうですね・・・」

「最近は情勢も落ち着いていますしたまには外に遊びにいきませんか?」

「部屋に籠りっきりも体に悪いですしいいですよ」

アルとフランは馬屋に向かうとそれぞれ馬に乗り少しはなれた草原に向かった。

当然であるが、護衛の騎士はしっかりとついてきている。

2人に何かあれば大問題なので仕方ない。

草原には季節の花が咲き乱れていた。

「綺麗な場所ですね」

「私のお気に入りです」

適当な木に馬を繋ぐと仲良く腰を下ろした。

心地のよい風が通り抜ける。

いつの間にかアルは眠ってしまっていた。

フランはその寝顔をみつつ花を摘み王冠を編む。

編み終わった頃にアルが目を覚ます。

「アル。これをどうぞ」

「これは・・・?花の王冠?」

「そうですよ」

「ありがとう」

アルは花の王冠を受けとると頭の上に乗せる。

「どうかな?」

「とってもお似合いですよ」

「お礼をしないとね」

アルはフランに教わりながら花の王冠を編む。

時間はかかったがどうにか完成させてフランに手渡す。

「ありがとうございます。どうですか?」

「とっても似合ってるよ」

「ふふ。また2人で来ましょうね」

「うん・・・」

こんな日常がいつまでも続けばいい。

そう思いながら2人はご機嫌で城に戻った。

夕食の席でセリュスにからかわれる。

「結婚したというのに2人はまるで中の良い姉弟みたいね」

「仲が悪いよりはいいだろう?焦ることはないさ」

ジェイクはそう言って笑っていた。

自分達の部屋に戻るとフランが勇気を振り絞って言ってくる。

「アル。夫婦らしいことをしませんか?」

「お義母様に言われたことを気にしてる?

「気にしていないといえば嘘になります。でも、アルとそう言う関係になりたくないわけではないんですよ?」

「う〜ん。今はこれで・・・」

アルはそっとフランに口づける。

唇と唇が触れるだけのキスだがフランは顔を真っ赤にする。

「今はこれで我慢してあげます」

アルはそんなフランを見て愛しい気持ちが溢れてくる。

自分もフランもまだまだ若いのだ。

ゆっくり距離を縮めていけたらいいな。

そう思うアルだった。

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