第93話

「まずは、辛い役目を押し付けて悪かったな」

「いえ。遺族のことを考えれば必要なことでした」

「そうか・・・」

「お父様。こんなことが二度と起きないように今後のことを考えましょう」

「報告によると、圧倒的な劣性だったようだ」

「そのようですね」

「対応策としては配備する船の数を増やすぐらいしか思い付かないな」

「ですが船員を育てるのには時間がかかります」

現状の状態では数を増やすのは難しいのだ。

「わかっている。ジェイク殿とも相談したのだがな・・・。ヒンメルン王国に学校を新たに作ることになった」

「同盟国とはいえ危険はありませんか?」

「言いたいことはわかる。裏切られれば我が国は窮地に陥るだろう。それでも、信用することにしたのだ

「わかりました。お父様が決めたなら反対はしません」

アルとフランの関係を考えればジェイクが存命の間は裏切られることはないだろう。

次代がどうなるかはアルとフラン次第だ。

ヒンメルン王国の王位を2人の子供が次げば危険性はぐっと下がるだろう。

「忘れるところだった。アルが9歳になったら結婚式を行うからな」

「結婚ですか?早すぎるような・・・」

「いいたいことはわかるが、政治的な理由だ。ヒンメルン王国ではフランソワ殿を諦めていない連中がいる。そいつらも結婚式を挙げればさすがに諦めるだろう」

「そういうことですか・・・」

アルとして反対する理由がなかった。

今更、フラン抜きの人生なんて考えられなかった。

「結婚式は2回行う予定だ」

「2回ですか?」

「うちの国とヒンメルン王国の国民に広く広める必要があるからな」

「確かに・・・」

国民のことを考えれば納得の理由である。

しかし、自分が結婚か。

アルとしてはまだ実感がない。

「なんだ?もっと喜ぶかと思ったがな」

「それが・・・。実感がわかなくて・・・」

「ふむ。大人びて見えてもまだまだ子供ってことかな?」

そう言ってジェイクは笑っていた。




アルはジェイクと別れるとフランの部屋に向かった。

「フラン。今、いいですか?」

「アル・・・?少し待ってくださいね」

そう時間もかからずフランが部屋に招き入れてくれる。

「何かありましたか?」

「実は・・・」

アルはフランに結婚式が決まった話をした。

「アルと結婚・・・。結婚・・・」

「フラン?」

「はっ。すみません。あまりにも嬉しくて」

「よかった・・・。やっぱり嫌なんじゃないかと・・・」

「そんなことはありません。アル以外となんて考えられませんから」

フランははっきりとそう言いきった。

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