第82話

1ヶ月はあっという間に過ぎた。

言語を学ぶのに1ヶ月は短かった。

船員5人も客人である3人も習得したというには不安の残る結果だった。

それぞれのレベルに合わせた教材を渡してあるので航海中も自分で学べるようにしてある。

アル達は交易品と食料を船に積み込みメール大陸に向けて出発した。

航海は順調に進み船は無事にメール大陸に到着した。

アルは船員達に指示を出してから真っ先に上陸する。

アル達が港町に着いたときには多くの人が集まっていた。

マルコシアス王国に滞在していた3人は暖かく家族に迎え入れられている。

「ようこそ。我々は貴女方を歓迎します」

「お世話になります」

アルとアンソンは握手をかわす。

「1つ試したいことがあるのですがいいですか?」

「なんでしょうか?」

「彼等はメール大陸の言語を学ばせていたのですが筆談が可能か確認しときたいと思いまして」

「なるほど。そういうことなら協力しましょう」

船員達はまずは挨拶から入り雑談を交えつつ今回来た目的を説明する。

「少し危うい部分もありますがこれなら会話できるでしょう」

「それはよかった」

アルとしてはひと安心である。

これでアル抜きでもメール大陸との交易ができるだろう。

「少し待っててくれ。すぐに歓迎の宴を開く」

そういってる間にも街の人達はそれぞれ荷物を運び込んでいく。

ドンチャン騒ぎになるのに時間はかからなかった。

アルは船員達にも参加するように指示を出す。

アルはお酒が飲めないので情報収集に徹する。

どうやらアル達との交易のために色々奔走してくれていたようだ。

前回、アル達が残していった砂糖は人気のようで他の集落との交渉が楽に進んだと嬉しそうに語ってくれた。

今回は本格的に取引をする予定で色々持ってきている。

この様子なら喜んでもらえるだろう。




宴も終わり翌日、本格的な交渉がはじまった。

価値観がお互いにわからないので探りながらの交渉だ。

大きな損をするつもりはないが多少の損なら許容するつもりだ。

だが、そんな心配などなかったように交渉はすんなりと終わった。

とくに人気なのは砂糖だった。

甘味は蜂蜜と果物に頼っているとのことで他の集落でも需要が高いのだとか。

続いて人気だったのがココナッツオイルだ。

こちらでも光源の確保は大変らしく日が暮れれば基本的に寝てしまうとのことだがそれでも何かあった際に光源は必要だ。

そう言った事情から喜ばれたのである。

1つ困ったのは岩塩の山であった。

これは捨て値で聖域の部族が置いていったそうだ。

全ては持って帰れない為、アンソンに保管してもらえるように頼み込む必要があった。

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