第83話
問題が全くなかったわけではないが取引も無事終わった。
積み込み作業も終えて後は出港するだけというときにメール大陸の言語を学んでいた船員3名から残りたいとの申し出を受けた。
アルとしては彼等にはマルコシアス王国で講師を引き受けてほしいと思っていたのだが現地に残り親睦を深めるのも悪くないだろう。
そう判断して許可を出した。
彼等は船員としても優秀な為、選別として小型の漁船を20隻残していくことにした。
メール大陸の漁船は手漕ぎの物だけなので彼等が指導して帆船を使えるようになれば助けになるはずだ。
メール大陸を発って2ヶ月予定通りにマルコシアス王国に帰還した。
船員達に作業を任せ、アルは両親に挨拶すべく王城に向かった。
「ただいま戻りました」
「お疲れさま。軽くで良いから報告を聞こうかな?」
「はい。取引は無事に終わりました。メール大陸に3名ほど残りましたが・・・」
「そうか。だが、これから取引を続けるならそれも有りだろう」
「僕もそう思い許可しました」
「ご苦労だった。下がっていいぞ」
「はい」
アルはエルドラの部屋に顔を出す。
「おかえりなさい」
機嫌がかなり良さそうだ。
「何かいいことでもありました?」
「女性の船員を育てる学校があったでしょ?」
「そういえば、そろそろ1期生が卒業ですよね?」
「最初は不安視する声もあったけど、大成功といってもいいわ」
「そうですか。僕も気になっていたので後で顔を出そうと思うんですけど」
「なら、私も一緒にいくわ」
アルとエルドラは馬車を手配してそのまま女性の船員を育てる学校に向かった。
学校では退役軍人である老人が厳しく女性達を指導している。
アルは懐かしい気持ちになりつつ訓練の様子を確認する。
彼女らは負けん気を発揮して訓練に食らいついていた。
その動きは男性にも負けていない。
「これは想像以上ですね」
「アルもそう思う?」
「えぇ。この様子なら海に出ても大丈夫でしょう」
「確認も終わったしそろそろ帰りましょうか」
「そうですね」
アルとエルドラは邪魔にならないうちに引き上げた。
この日は久しぶりに家族3人で食事を取り早めに就寝した。
「お父様。お母様。ちょっとフランを迎えに行ってきますね」
「そうね・・・。婚約者を放っておくわけにもいかないわね」
「気を付けて行ってくるんだよ」
アルは港に着くと女性船員用の船を港に浮かべてから船に乗り込むとフランを迎えにいくために待機していた船に乗り込む。
そのままヒンメルン王国を目指して出港した。
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