第16話

本日は艦隊を組みマーカスが解放した島に向かう。

教官は乗っているが船の指揮をとるのは首席であるアルだ。

「おいおい。緊張しているのか?」

「そうですね・・・。教官は乗っているとはいえ皆さんの命を預かっていると思えば緊張します」

「俺達はお前の指示に従う。自信持てって」

「はい」

全員が自分の役割をしっかりこなし船は順調に目的地に向かう。

途中、陣形をとったりと与えられた課題をこなしつつ目的地に到着した。

上陸許可が取り、アル達は島に上陸する。

表面上は何も問題がないように見える。

だがこの島は最近まで海賊に占領されていたのだ。

少し奥に入ればその傷跡がまだまだ残っていた。

その際たるものが倒壊した家々。

その家の前には孤児と思われる子供達。

アルは子供達の前に歩いていく。

「おい。よせって・・・」

リックがそう言うがアルは構わず子供達に話しかける。

「何か困っていることはありませんか?」

「侵略者は帰れ」

子供達のうちの1人がそう言い放ってくる。

そうか。

マルコシアス王国の一部だったとはいえ、長年支配していたのは海賊達だ。

子供達からすれば自分達が侵略者に見えても不思議ではない。

「おい。口の聞き方に気を付けろ。この人は・・・」

「いいんだ。彼等からしたら僕らは侵略者だ」

「だがよ・・・」

皆が言いたいことはわかる。

だが、説得は難しいだろう。

時間をかけて解決するしかない。

本当は彼等に食べ物などをわけてあげたいがこの様子だと受け取ってくれないだろう。

「行こう・・・」

アルはそう言ってその場を離れた。




船にアル達は戻ってきた。

船に残っていた教官が待ち構えていた。

「どうだった?」

「色々問題があることがわかりました」

「まぁ。軍人である俺が言うことでもないが頑張れよ」

アルは学生であると同時にこの国の王族だ。

反発されたとはいえあの子供達が国民の1人であることには変わりない。

まだ、海賊の支配から取り戻せていない島もある。

こういった問題はこれからも繰り返されることになるだろう。

彼等の不満を受け止め生活を安定させるためには何ができるだろうか?

今、一番人手を必要としているのは船舶に関わる軍人だ。

だが、侵略者という言葉からわかるように敵対心を持っている者に力を与えるわけにはいかない。

この島は幸いなことに農業に適しており小麦の栽培が盛んだ。

うまく開発すれば収穫はまだまだ増えるだろう。

そうなってくると輸出のために輸送船が必要だ。

安全に輸送をするためには護衛艦も必要になってくる。

結局のところ、どこもかしこも人手不足ということなのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る