第15話

今日もアル達は実習のために小型の戦闘艦に乗り込み海に出ていた。

「右舷に船影」

その報告を受けて船内が慌ただしくなる。

「所属はわかるか?」

「帆に髑髏。海賊です」

「よし。お前ら。喜べ。戦闘の経験を積むための的が向こうからやってきてくれたぞ」

そう教官が軽口を叩く。

「距離を保って大砲を撃ち込んでやれ」

「さっ〜いえっさ〜」

距離を保ちつつ大砲の発射準備をする。

はじめての戦闘で緊張している者もいるようだ。

アルはそれを見て落ち着かせるように言う。

「大丈夫だ。訓練通りにやればいい」

「あっあっ・・・」

アルは率先して砲を操作する。

「射撃用意よし!いつでもいけます」

「よし。号令と同時に発射だ」

帆の担当者達が巧みに帆を操り海賊船との距離が詰まる。

「よし。食らわせてやれ。発射だ」

その号令に従いアームストロング砲が一斉に火を吹く。

「命中を確認。続けて次弾装填急げ!」

大砲を掃除して次の弾を込める。

その間に海賊船が距離を詰めようとしてくるがこちらは一定の距離を保ち続ける。

「発射準備完了」

多少のばらつきはあるもののほぼ同時に全ての砲が発射準備を完了する。

「よし。よく狙え!発射だ」

再びアームストロング砲が火を吹き海賊船に命中する。

当たり所がよかったのだろう。

1本しかないマストがへし折れる。

海賊達も諦めたのだろう。

停戦旗が上がった。

「よし。お前ら。よくやった。停戦旗は上がっているが最後まで油断するなよ?」

海賊船に接舷する。

海賊達は無駄な抵抗をせず降伏した。

拘束して船室に海賊達を放り込み物資を回収して海賊船を海に沈めた。

マストが折れているので自走能力がないのでこれは仕方のない処置だった。

それにアルの能力でこの海賊船より性能のいい船などいくらでも生み出せる。




無事に母港まで戻ってきたアル達は指定の場所に船を止める。

捕まえた海賊達を連れて港に降りると街の警備を担当する衛兵達に引き渡した。

これから彼等は犯罪奴隷として罪を償うことになる。

人手が足りていない仕事はいくらでもあるので使い道は色々あるのだ。

「お前ら。ご苦労だったな。よくやった」

教官はそう言って全員を労ってくれた。

「よし。初戦闘を終えたお前達にご褒美だ。今日は俺が奢ってやろう」

『ありがとうございます』

全員で綺麗な礼をする。

しかし、育ち盛りの食欲を教官は甘く見ていた。

食費が浮くならと遠慮せずに食べまくった。

「お前ら・・・」

結局、持ち金が足りずアルにお金を借りる教官の姿があった。

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