第14話
アルは現在、寮住まいだ。
城から通うこともできるが他の学生との親睦を深める意味もあり寮に住んでいるのである。
この日は休日でありとあるリストを持って我が家である城に戻ってきた。
「お父様。お久しぶりです」
「お帰り。元気にやっているかな?」
「はい。皆よくしてくれますから」
「そうかそうか。だが、急に帰ってくるなんて何かあったのかい?」
「今日はお父様にお願いがあってきました」
「言ってごらん?」
「まずはこちらのリストを見てください」
そう言って持ってきたリストをマーカスに渡す。
「ふむ。見慣れない物もあるが食材と調味料だね」
「現在、これらの物は少量輸入されているだけです」
「ふむ。どれも高級品だ」
「値段が高いのは少量しか輸入されていないからです。そこで国として輸送船団を組むことはできないでしょうか?」
「輸送船団か・・・。悪くない話だね。だが、問題もある」
「問題ですか?」
「国で輸送船団を組めば商人達が反発してくるだろう」
現在この国での輸送は小型船に頼っている。
少ないリソースで生活に必要な物を運んでいるのだ。
アルが提出したリストに載っているものはその少ないリソースで空いたスペースに積み込まれているのだ。
「それなら優先的に商人に販売権を与えては?」
「ふむ・・・。だが、問題はもう1つある」
「なんでしょうか?」
「我々が戦力を所持しているのを他国に知らせるようなものだ。それをよく思わない国もでてくるだろう」
「それは早いか遅いかの問題では?我が国には強力な戦力がある。これをいつまでも隠しておくのは無理です」
「そうなのだがな・・・。私としては少しでも発覚を遅らせたいんだ」
マーカスの言い分もわかる。
アルが提供した船は強力だ。
だが、船は用意できてもそれを操る人材が不足している。
それを解消する為に作られたのが学校なのだ。
「この件は心にとどめておこう」
国主としてマーカスが判断したことだ。
これ以上、言ってもどうにもならないだろう。
「はい・・・」
政治の話は終わり、そこからは家族の時間だった。
学校であったことをアルは楽しげにマーカスに話す。
途中でエルドラも合流してお茶会をしつつ会話に花を咲かせる。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていく。
夕方となりアルは寮に戻るべく城を後にした。
去り際にエルドラに強く抱き締められたのが印象的だった。
本来であれば親子としてもっと触れ合いの時間があるのが普通だ。
好きなことをさせてくれる両親に感謝しなければならないだろう。
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