第13話
アルはその立場上、学校を卒業すれば艦隊の指揮官になるだろう。
ここまでの成績は全て優秀であり、上に立つ者が優秀であるということは悪いことではない。
「よし。今日はここまでだ。帰港する」
その声に学生達が歓声を上げる。
「皆さん。気を抜くのは早いですよ?港につくまでが実習です」
アルは全員にそう言った。
「おい。俺のセリフ・・・」
教官は悲しそうにそう呟いた。
問題なく帰港してそこで今日の実習は解散となる。
アルは同級生に誘われて街に繰り出した。
最初の頃は、王族ということと歳が離れていることから腫れ物に触れるような扱いだった。
だが、アルはそれを良しとせず積極的に親睦(物理)を仕掛けていった。
その結果、今ではこうして街に一緒に遊びに行く仲となっている。
「こないだうまい飯屋を見つけたんだよ」
「へぇ。リックが言うなら間違いないですね。今日はそこに行ってみましょう」
リックは街で評判のレストランの3男でその舌は確かだ。
わいわい騒ぎながら街を歩く。
お店は寂れた通りにあった。
「いらっしゃい」
「おやっさん。例の物を」
「おう。本当にまた来てくれたんだな。すぐに用意する」
そう言っておやっさんと呼ばれた男は調理に取りかかった。
すぐに香ばしい匂いが漂ってくる。
「この匂い、やばいな。すげぇ腹が減ってくる」
「そうだろうそうだろう。期待してくれていいぜ」
しばらくして、料理がテーブルに運ばれてくる。
「これは・・・」
アルはその料理を見て喜んだ。
「おっ?喜んでくれたか?よかったよかった」
運ばれてきたのは海鮮類を豊富に使ったパエリアだった。
「このお米は輸入品ですよね?」
「小さいのによく知ってるな。知り合いに頼んで少量だが輸入してるんだ」
この国では主食はパンである。
こんなところで、お米に出会えるとは思っていなかった。
「さぁ。冷める前に食べようぜ」
「いただきます」
アルはスプーンを手にパエリアを口に運ぶ。
魚介の味がしっかり染み込んでいてとても美味しかった。
あっという間に完食したアルはおやっさんと呼ばれた男性に声をかける。
「とても美味しかったです」
「そうか。喜んでくれて俺も嬉しいぜ」
「また越させてもらいますね」
「おう。いつでも歓迎だぜ」
店を後にしたアルは考えこむ。
「どうした?難しい顔をして」
「いえ。美味しかったんですけどね少しお値段が」
「あぁ・・・。それは少量しか輸入できないのが原因だな」
「ふむ・・・。お父様に相談してみます」
「ああ。期待してるぜ」
そう言ってリックはにやりと笑う。
どうやらこのお店に連れてきたのはこれが狙いだったようだ。
お馬鹿そうに見えるリックであるが試験を潜り抜けられるほどに優秀な人物である。
見事にその策略に巻き込まれる形となった。
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