第12話

学校を作ることは決まったが、稼働するまではしばらく時間がかかる。

そこでアルは事前に少しでも知識を身に付けようと本を読んでいた。

基本的に帆に風を受けて船を動かすのだがこの世界には魔法が存在している。

魔法で風を生み出し加速したり急減速をすることもできるようだ。

それとは別に魔法で遠距離攻撃をする場合は火魔法が有効だとも書いてある。

まぁ、普通に考えて木で作られているのだ。

炎上したら被害は大きくなるだろう。

その対策として水魔法も大切だと書かれている。

炎上した際の消火はもちろんのこと飲み水を作り出すこともできる。

他にも魔法を使えば色々できそうである。

それは置いといて必要になりそうな知識を頭に詰め込んでいく。

元々、好きなことであり子供特有の柔軟性もあり1ヶ月ほどで関連書籍は読み終わってしまった。




マーカスは精力的に動き学校の創設の準備を1ヶ月ほどで終えた。

この国は農業もやっているが規模は大きくない。

国民の多くが海の恵みに依存している。

国民の多くは新たにできるこの学校に大きな期待をしていた。

そんな理由もあり入校希望者が殺到している状況だ。

入校希望者をふるい分けるために学力テストに体力テストを実施することになった。

その中にはアルの姿もあった。

王族ではあるが公平を期するために厳しめに審査が行われた。

アルはその中で首席の成績をとり栄えある第1期生として入校することが決まった。

マーカスとしてはほっとした気持ちだった。

毎日、楽しそうに勉強をしていたアルの姿を見ていたからだ。

これで、入学できないとなったらどれほど落ち込むことになったか。

だが、大変なのはこれからだろう。

まわりは青年ばかりなのだ。

まだ6歳のアルは浮いてしまう。

能力は心配していないが周囲とうまくやっていけるだろうか?

教官達にそれとなくフォローを頼んだ。

だが、その心配は杞憂に終わることになる。

アルは実力で反発する者達を押さえ、派閥のようなものを形成していった。




陸での教育が終わり、いよいよ船を使っての実習だ。

アル達に与えられたのは小型の戦闘艦だ。

この船を提供したのはもちろんアルである。

船長は教官が勤めておりアル達はその指示に従うことになっている。

「なんだ?お前達。そんなに船に乗れるのが嬉しいのか?」

「はい。そのために学校に入校したのですから」

「そうかそうか。だが、その余裕はすぐになくなるだろう」

実際、実習は地獄そのものだった。

何度も帆を操作させられる。

慣れない動作を繰り返すのは精神的にも肉体的にも疲労するものだ。

その中でアルだけが元気なままだった。

「お前は化け物か?」

教官は思わずそう言ってしまう。

「疲れていないわけではないですよ?でも、それ以上に楽しくて」

「そうか・・・」

教官は苦笑いするしかなかった。

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