第5話

夕食の時間は家族揃って食べるのが我が家の決まりだ。

「アル。今日から剣と魔法の練習をはじめたのだろう?どうだった?」

そう聞いてきたのは父親でありこの国の国主であるマーカスである。

「剣の方は怒られてばっかりで・・・」

「そうか。腕は確かなのだがな。厳しいのは期待の裏返しでもある。もう少し頑張ってみないか?」

マーカスは優しくそう言ってくる。

自分でも1日で逃げ出すのは違うだろうと思う。

「はい。頑張ってみます」

「それで、魔法の方はどうだったのしから?」

そう聞いてきたのは母親であるエルドラである。

「魔法の方は才能があるって言われました」

「そうかそうか。さすが私達の息子だ」

マーカスは上機嫌でそう言う。

「困ったことがあったらいつでも言うのよ?」

「はい。そうだ。お父様とお母様に見てほしいものがあるんです」

「見てほしいもの?」

「きっとお父様の助けになるはずです」

「そうか。期待しておこう」




夕食も終わって後は寝るだけとなった時間。

アルは両親と共に自分の部屋にいた。

「それで、見せたい物というのは何なんだい?」

アルは小型の漁船をアイテムボックスから取り出す。

「いったいどこから・・・?」

エルドラはあまりのことに固まってしまう。

だが、マーカスは落ち着いていた。

「アル。お前はアイテムボックス持ちか?」

「この力はアイテムボックスというのですね」

そう言って一応誤魔化してみる。

「それで、この船はどこから持ってきたんだい?」

「絵本でお船のことを知って念じたら出てきました」

「そうか・・・。アルは特別な加護持ちだったのか・・・」

「それで、お父様。このお船は役に立ちますか?」

「あぁ。我が国は島国だからな。小さいとはいえこの船があれば国民は助かるだろう」

「喜んで貰えてよかったです」

「うむ。とはいえ、運ぶのも大変だからな。一度しまって貰ってもいいかな?」

「はい」

アルはアイテムボックスに漁船を回収した。




翌日、マーカスに連れられてアルは港にやってきた。

指定された場所に小型の漁船を50隻。

中型の漁船を10隻出す。

「お父様。こんな感じでいいですか?」

「上出来だ。これで国民も助かるだろう」

港に止められたこれらの船は国民に貸し出される形となる。

突然、出現した船に国民達もお祭り騒ぎだ。

それぐらいこの国では船は大切なものなのだ。

船は国民の生活に密接している。

だが、島国であるこの国では木材を十分な量確保するのが難しい。

そのため、簡単に船の数を増やすことができないのだ。

アルフレッドのこの船を生み出す能力は革命的といえた。

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